個々人に徹底した成果主義と実力向上を求める

デジタル化に関する分野では、サムスン電子がファウンドリ(半導体の受託製造事業)を強化する。11月24日にはテキサス州での半導体工場の建設が発表された。

特に重要なのが、次世代の回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)のロジック半導体の生産が目指されることだ。より微細な半導体生産技術の確立と、その歩留ぶどまり向上で台湾積体電路製造(TSMC)に後れをとる同社としては、半導体サプライチェーンの強靭化を目指す米国政府の支援を取り込んで最先端の半導体生産ラインを確立し、TSMCとのシェア格差を縮めたい。

半導体の製造
写真=iStock.com/MACRO PHOTO
※写真はイメージです

サムスンは既存分野での事業運営体制の維持よりも、より成長期待の高い分野に迅速、かつ競合他社に引けをとらない規模で投資を実行することを重視している。中長期的な展開を考えると、その事業戦略は相応の成果をもたらす可能性が高い。成果の実現のために、サムスンは徹底した成果主義を貫き、個々人に実力向上を求める。わが国企業にとって、そうした組織運営力に見習うべき点は多い。

比較優位性のあるうちに新しいモノ・サービス創出を

わが国は自力で経済成長を目指す最後のチャンスを迎えている。現時点で、わが国企業が強みを維持している分野はある。ただし、残された時間はあまり長くない。わが国の物流企業は近距離利用を目的に中国企業が生産するEV導入を発表し、自動車メーカーは国内の需要を取りこぼし始めた。HV技術を磨いた自動車産業に次ぐ新しい産業育成は喫緊の課題だ。

本邦企業に必要な発想は、素直に世界経済のメガチェンジに対応することだ。例えば、バッテリー分野でわが国企業は比較優位性を維持している。その一方で欧州では再エネ由来の電力供給が落ち込んだ。中長期的に世界全体で脱炭素は加速する。再エネと蓄電池を組み合わせた電力システムの供給によって、わが国企業は脱炭素を成長につなげることができるだろう。

このように、企業は強みを活かして世界の課題を解決する新しいモノやサービス創出を目指すべきだ。その上で、単独での海外進出などが難しい場合には、積極的に国内外の企業との提携が模索されるとよい。成長の実現は、人々に新しい取り組みを促し、より効率的な事業運営を支える。