イノベーションというと、真っ先に科学や技術のことを思い浮かべるかもしれない。しかし、実際には、革新的なテクノロジーやビジネス・モデルが世の中に根付くためには、社会のインフラの整備が必要である。
インフラの中には、たとえば、ブロードバンドのインターネットの普及がある。日本は世界でも有数のブロードバンド大国である。一方、インターネット先進国のイメージが強いアメリカのほうが、かえってブロードバンドの普及は遅れている。
まさにそのアメリカから、グーグルやフェイスブック、ツイッターなどの世界的に普及したインターネット上のサービスが生まれているのはなぜか?
一つの大きな要因として、法律を含む、社会のルール作りについての哲学、姿勢の違いがあるような気がしてならない。
アメリカでは、1998年に成立し、2000年に施行されたいわゆるデジタルミレニアム著作権法が、急拡大するウェブ上の情報ビジネスの一種の「インフラ」となっている。インターネットサービス提供者が、たとえ使用者が著作権の侵害をしたとしても、一定のルールに従って迅速に対処すれば免責されるという「セーフハーバー条項」が存在するのである。
たとえば、ユーチューブ上に誰かが著作権で保護されている映画などのコンテンツをアップロードしたとしても、通知されたときに迅速に対応すれば、免責される。そのような「保証」があるから、ユーチューブは安心して運営を続けることができる。
もちろん、日本においても、プロバイダの責任を制限する法律は存在する。しかし、その解釈、運用は、必ずしもアメリカにおけるような明確なかたちにはなっていない。そのことが、日本の企業や起業家に対する足かせになっているように思う。