大企業の人事考課は大きく分けて「業績評価」と「行動評価」の2つの軸で成り立つ。

前者は、1990年代後半に成果主義の導入が進んでから一段と重きが置かれた。ひと言でいえば数字の世界である。営業部であれば契約額などがその対象となる。この銀行の考課表では別紙の「チャレンジシート」に書いた目標の達成度が問われる。

後者は、この考課表の「取組姿勢評価」と書かれたところに並ぶ「時間管理」や「経営意識」「能力開発への取り組み」などである。数字では評価しづらく、基準があいまいであるがゆえに、上司による恣意的な操作が行われやすいともいえる。

ここ数年、業績に重きを置いた成果主義への批判が強かった。そこで人事部員たちは、この「行動評価」のあり方を見直すようになってきている。この銀行の人事部員も「これまでは、おのおのが自分の実績にしか目を向けなかった。そこで、評価項目に『経営意識』や『顧客志向』などを新たに盛り込んだ。今後は、チームによる成果主義を目指す」と話す。

「最終評価判定」を見ると、「目標の結果」のウエートが50%、「取組姿勢評価」が50%となっている。前者は業績(成果)評価、後者は行動評価である。人事部員によると、「2年前の改訂時までは前者のウエートが70%、後者のそれが30%になっていた」という。

これらの変化だけを見ると、「成果主義の見直しが起きている」と受けとられるかもしれない。だが、実態は異なる。人事部は成果主義をより一層、質の高いものにしていこうと画策しており、いわゆる「年功序列型賃金制度」に逆戻りさせることは考えていない。この人事部員も、「成果主義を続けていかないと、総額人件費を抑え込むことはできない」と本音を漏らしていた。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)