世を去った人の魂と、今を生きる<いのち>を包む祈り

また、光子はキリスト者として、戦中、特高からも監視される中、礼拝をすることも、地下のような場で、ひっそりとせざるを得なかった。戦争が終わり、今、光子はようやく、声高らかに、自分の大好きな愛する聖歌を歌うことができる。また、十字架も堂々と、身につけることができる。そのことの喜びは間違いなく大きなものであった。

しかし、豊橋空襲で、愛した教会もまた焼け落ちたに違いない。事実、日本聖公会中部教区「豊橋昇天教会」は、関内家が焼失した同じ日の、1945年6月19日の空襲で全焼した。現在の「豊橋昇天教会」は、1949年11月3日に再建されたものである。

「うるわしの白百合」を歌い終わった薬師丸ひろ子さんが、ゆっくりと、しかし、優しく十字架をその手に包む美しい場面があったが、事前に、私と薬師丸さんとで相談させていただいた姿である。それは、世を去ったすべての人の魂と、いま生きるすべての<いのち>を優しく包む「祈り」に他ならない。このような「祈り」を見事に表現された薬師丸ひろ子さんと、また、制限のある中にあって、その「祈り」を静かに、そのままに届けてくださった『エール』の制作陣のお一人ひとりに、あらためて、心からの感謝を伝えたい。

【関連記事】
ブッダの教え「絶対に付き合ってはいけない4種類の人、付き合うべき4種類の人」
「明治維新は薩長によるテロだった」初めて大河ドラマでそう描いたNHKをもっと褒めよう
「愛する人が死んだとき、人はどうするべきか」ブッダが説いた5つの方法
「オジサンオバサンの郷愁がダダ漏れ」今秋の最強ドラマ『おいしい給食』をあなたは見たか
「NHK大河ドラマでは描きづらい」渋沢栄一の激しすぎる"女遊び"の自業自得