“感情脳”が人を動かす
従来の能力開発理論は、イメージと思考を中心に組み立てられてきました。イメージや思考を司るのは「大脳新皮質」にある右脳と左脳ですが、私はその内側にある「大脳辺縁系」、いわゆる“感情脳”に着目したアプローチを行っています。
イメージや思考という理屈だけでは心をコントロールできない。より深いところにある“感情脳”が人を動かすのです。
肯定的錯覚を続けるためには、常に前向きの予感、肯定的な「かも」で心を満たして、“感情脳”を傷つけないこと。感情脳が「快」の状態なら、自然とプラス思考ができるようになるのです。
近年、うつ病のビジネスマンや自殺者が増えていますが、否定的な思考習慣に縛られている人は、肯定的な錯覚ができるよう、頭を切り替えてほしいと思います。
でも、どうしてもマイナス思考から抜け出せない、他人を責めることでしか自分を守れないという人もいるかもしれません。
そういう人は、とりあえずマイナス思考はそのままにして、プラスのイメージ、プラスの感情を持つよう心がけてください。そうすれば、プラス思考はあとからついてくるはずです。
たとえば、毎日遅くまで飲み歩いている私に対し、妻は烈火のごとく怒ります。まさに鬼のような形相なのですが、「うるさいな、この鬼ババア!」というマイナスの感情を持つと、「どうしてこんな女と結婚したんだ」とマイナス思考に陥ってしまう。でも、「亭主の健康をこんなに心配してくれるなんてありがたいなぁ」と感謝すれば、「妻はとてもいい人だ」という肯定的錯覚が生まれるのです(笑)。
否定的なことを考えたり、口に出したときは、肯定的な記憶データに塗り替えておくことも重要です。
危機的な状況に置かれても、誰かを責めるのではなく、「これは私を強くするチャンス。神様からのプレゼントかも」と肯定的に捉える。すると、“感情脳”が「不快」から「快」へと切り替わるのです。眠っている間に、否定的な記憶が脳に固定化されないよう、寝る前に「記憶の塗り替え」を行うことをお勧めします。
また、肯定的な自己暗示をかける方法もあります。
嫌なことがあったときに「なし!」と言ってパチンと指を鳴らす、「俺は人とは違う。だからこんなことでは腹を立てない」と口に出す――そんな決めごとをつくっておいて、マイナスの感情を忘れるきっかけにする。私は、毎朝、目覚めたときに、「俺はツイてる!」と言うようにしています。根拠なんてなくても大丈夫。言葉にすることで、“感情脳”を「快」の状態にすることが重要なのです。
苦手な人と接するとき、自分の好きなものを重ねてイメージする方法も、意外なほど効果があります。
私も、会社勤めをしていた頃、大嫌いな上司の頭の上に、好物の松茸が生えている姿をイメージして、「松茸上司」と心の中でおもしろがっていました。そうすれば、「嫌だなぁ」というマイナスの感情が消える。「そんなバカな!」と思う人は一度試してみてください。