レジ袋有料化が万引きの現場を変えた
2020年7月にレジ袋が有料化されて以降、その代用品としてさまざまなタイプのエコバッグも販売され、もはや手ぶらで買い物に来る人の方が珍しくなった。
エコバッグを持参することで、魔が差す機会が増えてしまうのだろうか。持ち込んだエコバッグに商品を隠す被疑者のほか、それを幕にしてカゴの中の商品を覆い、あたかも精算済みであるかのように見せかけて未精算の商品を持ちだす「カゴヌケ」の手口を用いる被疑者が目立つ。
レジ袋不要客を装い、堂々と商品を持ち出す「持ち出し」の手口も横行しており、どの現場に入っても気が抜けない状況におかれる。店内で買い回り中に、レジ袋やエコバッグを広げないようポスターなどでマナー啓発している店も見かけるが、足を止める客は少なく、その効果は不明だ。
「不審者」の象徴になっていたエコバッグ
エコバッグや使用済みのレジ袋を持って買い回ることで、万引きしていると疑われている気がすると訴える人も多いと聞く。
確かに以前であれば、使用済みのレジ袋や大きなエコバッグを売り場に持ち込むこと自体が不審の端緒となり、行動確認の対象とするのが定石だった。経験の浅い新人でもたやすくできる見極め方のひとつとして、そのような人物が入店した際は、必ず追尾するよう新人研修時などで指導していたほどだ。
一度商品を精算した後、商品を詰めたレジ袋を手に売り場に舞い戻り、いくつかの商品を袋に追加して出ていく「出戻り」と呼ばれる手口が、その典型といえるだろう。しかし、エコバッグなどの持ち込みが推奨される現在、この見極め方は通用しなくなってきた。
コロナ禍におけるマスク着用の義務化も、不審者の割り出しに大きな影響を及ぼしている。顔や目線を隠すために、帽子やマスクを着用してくる常習者は多く、これまでは注意対象としていたからだ。
マスク着用が義務化された当初は、店内が不審者だらけに見えてしまい、店の雰囲気が悪くなったと頭を悩ませる店長がたくさんいた。不審者の絞り込みができないまま現場で右往左往し、誤認事故を引き起こす新人保安員も増えたように感じる。
レジ袋有料化とコロナ禍における感染防止対策の影響で、万引きに至る不審者の見極め方が複雑化してしまい、技術指導や新任教育の内容も大きく変わった。社会情勢の変化により、万引きしやすい環境が整えられていく現実が、皮肉に思える。