世の中は「ウソをついた者勝ち」になっている

初めて新幹線を建設させた十河そごう信二という人は「新幹線の父」とよばれています。ところがこの人、新幹線の建設を国会で認めさせるにあたって、大ウソをついているんです。いったん工事が始まったら途中でやめられないのをいいことに、実際にかかりそうな額よりもはるかに少ない経費で建設できるってウソをついたわけです。

ひろゆき『誰も教えてくれない 日本の不都合な現実』(きずな出版)
ひろゆき『誰も教えてくれない 日本の不都合な現実』(きずな出版)

これは僕の想像ですが、彼としては「ウソをついてでも、新幹線を実現させたほうが日本のためになる」といった確信があったのでしょう。

いいか悪いかは別にしても、実際のところ、世の中では大ウソつきの主張がまかりとおることがたくさんあります。イギリスで2016年におこなわれたEUから離脱するかどうかを問う国民投票でも、離脱派が並べたてた離脱のメリットにウソがありました。そのことを当時のキャメロン首相をはじめ多くの人が指摘していましたが、結局、離脱派が勝ちました。

安倍晋三元首相も、柱となる政策の1つに、物価の2%上昇をかかげましたが、実現しないまま長期政権を続け、やめました。ウソをつくのは選挙に勝ちたいなどの理由からですが、日本だとたとえウソがばれても困ることはないようなので、世の中は「ウソをついた者勝ち」になってしまっています。

そういう社会がいいとは思いませんが、とにかく、世の中がそうなっているということは、知っておいたほうがいいでしょうね。

そんなウソがまかり通って実現したのが2021年の東京オリンピックです。招致段階で7340億円と報告された大会経費は、新型コロナが流行する前の2019年12月の時点で1兆3500億円とほぼ倍増し、21年には1兆6440億円にまで増えています。新幹線のような結果オーライになるかどうかは、みなさんの判断次第……ですね。

「経済が回らないと人は死ぬ」はウソ

コロナ禍において、「経済を回さないと人が死んでしまう」と主張する人がちょろちょろいますよね。休業要請やお客さんの減少で経済的に苦しくなると、自殺する人が増えるという考えですが、ストレートに信じてはいけない意見です。

そもそも、人は本当に経済が回らないと自殺を選ぶのでしょうか? たしかに日本では景気と自殺者の数が関係あることが指摘されていますが、アフリカなどには、もう何十年も景気が悪いのに自殺者が少ない国も存在します。

日本で年収200万円だと低所得者ですが、世界の多くの人は年収100万円以下で暮らしています。要は、日本で景気と自殺者数が関係あるにせよ、それは経済状況そのものからというよりも、気の持ちようの問題なんじゃないかと考えられるのです。

また、緊急事態宣言で外出する人が大きく減った2020年4~5月には、自殺者の数が減ったというデータもあります。つまり、給付金などのお金をもらって、働かないで、外出を控えたら、自殺する人が減ったということです。

自殺者の数が減った直接の原因ははっきりしませんが、いずれにせよ、「経済が回らなくても人は死なない」ことがはっきりしました。

いまの時代、お金なんかなくたって楽しく暮らせます。にもかかわらず、「お金が回らないと人は死ぬ」というのは、「人はお金がないと死ぬのが当たり前」っていう価値観をつくり出しているようにしか思えません。

コロナ禍で経済上の苦労から自殺を選ぶ人がいるのも、本当は「人はお金がないと死ぬのが当たり前だよね」といった価値観の影響ではないでしょうか。むしろ僕は、「お金がないから自殺するのって、よく考えたらヘンだよね」という価値観をつくっていくべきじゃないかなと思います。