公明党の対中姿勢の転換には限界がある
また、一帯一路や戦狼外交といった、国際社会に対して挑発的な姿勢を取り続ける中国の習近平・現政権に対し、創価大学教授の樋口勝は2019年に発表した「社会主義中国と創価思想」という論文のなかで、「習近平が言う『社会主義社会に適合する宗教』や『宗教の中国化』という宗教政策の根底には、宗教の精神性から人間のあり方を学ぶ姿勢が伺えます」などと評価している。
「社会主義中国と創価思想は、両者の宗教観(本体論)に相違はあっても、人間の幸福、社会の繁栄、日中の友好、世界の平和のための対話を展開していく基盤と目的は、互いに通底していると言える」とし、現状のチベットやウイグルに対する中国の政策にも、「チベットやウイグルの独立問題や、イスラム過激派のテロ問題、地下教会の管理問題など、共産党による国内統治の不安定要素を取り除くのが目的です」と、理解を示してみせるのである。
そもそもだが、創価学会の方針の大転換を決定できるのは、最高指導者たる池田大作以外にない。現在93歳の池田の健康状態がいかなるものなのかはともかく、現実として彼はここ10年近く、公の場に姿を現さず、具体的な指導も行っていない。
創価学会であろうと公明党であろうと、池田大作本人の許可なくして、「日中国交正常化を成し遂げた池田大作先生」のイメージに傷はつけられない。そうであれば、公明党の“対中姿勢の転換”にも、おのずと限界は生じるはずだろう。(文中敬称略)