「haveの人」になるか「beの人」になるか

【石川】観察力の鍛え方』では、観察は「する」でも「される」でもなく「いる状態を見ること」だと書かれていますね。

僕が「する」と「いる」について明確に教えてもらったのは、心理学者のエーリッヒ・フロムが書いた名著『To Have or To Be?(邦題:生きるということ)』でした。その中では、To Have「持つこと」(=する)、To Be「あること」(=いる)と書かれている。

例えば、haveの人が初対面の人と会うときは、事前にその人にまつわる情報をたくさん調べていきます。一方、beの人は、準備せずに会いに行く。それは、出会ってしまえば、何かを共につくりあげることができるという自信がある人たちだからです。

自分が「haveの人」でいるかぎり、「過去」のものしか提供できなくなってしまうと気づいてから、事前準備をしないようになりましたね。

ビジネスマンの握手
写真=iStock.com/Pinkypills
※写真はイメージです

【佐渡島】なるほど。もう出来上がっているものでなければ、haveすることができないもんね。

【石川】「いる」ということは、一緒にこれからのことに目を向けてみようよ、ということなのかもしれません。

「ジョギングに目的がなくなった」

【佐渡島】僕ももともとはhaveのタイプだったのが、善樹とたくさん話をするうちに、beの人になってきているなと思います。

例えば、かつてジョギングをしていた時は、決めたらとにかくやり続ける性格もあって、疲労骨折をするまで休まない。それでケガをして、3カ月ほど休んでいたらすっかり走らなくなってしまうといったことを繰り返していました。

【石川】それもすごい(笑)。

【佐渡島】そう。僕がケガをするまで休めなかったのは、ジョギングをしていることや、身体がシャープになった自分を人に見せることを目的にしていたから。でも今は、ジョギングに目的がなくなった。街を味わうための「道具」としてジョギングを使っている感覚なんです。

だから、ジョギングに出ても、その日の身体の状態を確認しながら、歩いたり休んだりすることもあります。

先日、札幌でジョギングをした時は、街が碁盤ごばんの目になっているため、信号ですぐに止まってしまい思うように走れなかった。以前だったら、走れないことに腹を立てていたはずなのが、今では、走っては信号に止まる自分を面白がっていましたね。