「誰といてもリラックスする」ことの重要さ
【石川】1on1のときに自分がどんな感情を持って相手と接しているかということにも通じますね。「評価されてしまう」という不安や恐怖を持って臨んでいる人も多いと思うので。
【佐渡島】評価を受ける側だけでなく、評価する側も「このフィードバックで相手が怒りだすのではないか」と恐怖しながら話していると、相手がおびえてしまうこともある。だから、「誰といてもリラックスする」ことを徹底することが重要です。
馬との研修でも、自分の超リラックス状態がどうやったら作れるんだろうという問いに収斂していました。馬をどう観察するかではなく、どうやったら自分が超リラックスするか、観察していたんです。1on1の場においてのリラックス状態というのは、「このフィードバックを受けてどう変化するかを決めずにおく」といったことです。
【石川】リラックス状態でいるためには、準備しないということがポイントになるかもしれませんね。プレゼンもインタビューも、準備すればするほど緊張してくるものなので。
【佐渡島】でも、善樹も会社のコンサルをする時は、その会社の社史を調べたり、なんらかの準備をしない?
【石川】ええ。でもホームページを見て、その会社のビジョンやミッションを見るくらい。それ以上は特にしないんですよ。何か一緒にやるときに、「みんなで集まればなんとかなる」と思うようになってからは準備をしなくなりました。
妄想をやめて、相手の話を聴くことに集中する
【佐渡島】それは自分に対しても相手に対しても圧倒的な信頼がある。
【石川】そうかもしれない。一緒に始めれば絶対なにかできるっていう自信があるのだと思います。
【佐渡島】僕はよく「自分なりの仮説を持って話を聴いてみて」と言っているけれど、準備と仮説の差ってなんだろう。
【石川】ネットで拾える情報や知識など枝葉の部分を集めるのが「準備」で、「仮説」はもっと幹の部分について考えることだと思いますね。
【佐渡島】枝葉を集めながら、一生懸命、準備したと思っていることが多いのかもしれない。そして、「時間を費やしてきたのに反論されたらどうしよう」という、恐怖心を持ってプレゼンに臨んでいるのかもしれない。
相手の本質を知らずにする準備は、北海道に行くのか、沖縄に行くのかわからずにする荷造りのようなもの。それに、準備をしているときは「相手にとってこれがいいはず」という妄想が起きている場合もあります。そして、その妄想と相手の反応がズレたときにも、人は傷つく。まずは妄想をやめて、とにかくしっかりと状況を見る、相手の話を聴くことに集中するに尽きる気がします。