自粛生活では自宅で過ごす時間が増えやすい。医師の杉岡充爾氏は「『おうちストレス』がきっかけでメンタルに不調になる人が目立つ。家は快適だと思っても、脳には負担がかかっている」という――。

※本稿は、杉岡充爾『おうちストレスをためない習慣』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

夜中に暗い自室で働く女性
写真=iStock.com/K-Angle
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「おうちストレス」でメンタル不調を訴える人たち

リモートワークによる疲労感からメンタルの不調を訴えた20代の女性がいました。彼女は家で仕事をすることが増えていて、最初は動悸の疑いで私のところに相談にきました。

話を聞くと、コロナウイルスの流行をきっかけに家にいることが多くなり、外にも出なくなり、しだいに不安が強くなり、動悸のような症状が出てきたそうです。

この人は、家で仕事をやり過ぎてしまうタイプではなく、反対に在宅によって仕事が楽になり、オフの時間が増え、やることがなくなってしまったタイプでした。それにもかかわらず、メンタルに不調が出てしまったのです。

また別の人の事例を紹介します。「なんとなくの不調」を訴えてクリニックを訪れた、40代の女性がいました。胸の違和感が長く続き、もういくつも病院を渡り歩いているといいます。

でも、どの病院でも「どこも悪くない」と言われて、困り果てて私のところに来たそうです。たしかに私のところで検査しても、なにも悪いところはありませんでした。

そこで、その人に「本当に心臓が悪いと思っていますか?」と聞いてみたのです。するとその女性は、「思っていません」と答え、その場で突然、せきを切ったように泣き出してしまいました。

心臓が原因ではないことをはじめて理解してもらえたと感じて心が軽くなり、つい感情が溢れてしまったようです。泣きはらした彼女は、少し気持ちが楽になったと言って帰っていきました。

彼女は、「自分の抱える不調は精神的なものではなく、絶対に身体的な不調なのだ」と自分に言い聞かせていたのです。裏を返せば、「体がどこも悪くないのに不調を訴えてはいけない」「病状がないと誰も理解してくれない」と、自分を追い込んでいました。

そして、身体的な原因を探すためにいくつもの病院にあたっていたのです。