50代以上の転職は99%が上手くいかないが…

かように50代以上の転職は極めて厳しい。企業はこの年代の求人をほとんど出さない。

また、仮に収入面はクリアできても、その転職が自分の幸せに結びついている人は、どれだけいるだろうか。99%はうまくいかない。しかし、99%がうまくいかないということは、その反対側に1%のうまくいった人もいるということになる。

私は本来、こうした事例を取り上げて、「これをすればよいのだ」というレトリックを使うのは好まない。なぜなら、中高年世代はキャリアもキャラクターも千差万別で、1つの定型には当てはまらないからだ。

それでもうまくいった事例を並べてみると、数少ない50代以上の転職の成功者には、いくつかの共通点が見えてくるのは確かだ。具体的な何かを抽象度を上げて解析すると、真理が見えることがある。

そこで、これから数名の「1%の成功転職者」を挙げたい。そのまま真似をせよということではない。50代以上の稀有な転職成功への道筋が、あるいは仕事人生の幸せな後半戦の大いなるヒントが浮かび上がってくるはずだ。

「役職がなくても、給料が減っても、働ける場所が欲しい」

Bさんはシンプルなパンツスーツを着こなしたスマートな女性だ。

私の会社を訪ねてくれたのは55歳のとき。新卒で入った某大手メーカーの研究員でマネジメント職まで駆け上がった人材だった。Bさんの年齢でそこまで上にいくのは相当な努力をされたのだろう。

しかも専門的な知識はもちろん、大きな研究所でいかにして人心をつかむかにまで精通しているようだった。

またBtoC(ビジネス・トゥ・カスタマー)向けの製品を手掛ける会社だったため、マーケットのニーズにも敏感で、少し前職の話を聞いただけでも、引き込まれるような視座の高さも持っていた。

これだけの人材なので、今いる会社からも「まだまだ会社に残ってくれ」と言われていたが、本人は「外の世界を見たい」と考えていた。

これまでやってきたような大規模な研究設備を使って研究開発するような仕事は、もう年齢的に難しいのはわかっていた。ただこれまでの経験と知識も含めて、別の場所で活かせるならば活かしたい。

役職なんていらない。給料は減ってもかまわない。しかし、あと10年、20年は働ける場所がほしい。自分をまだ世の中に役立てたい、というのだ。

私はBさんの魅力を強く認識しながら、しかし、50代以上の求人がほとんどないなかで頭を抱えた。エンジニアや研究職を求める企業は多いが、やはり50代という“数字”だけで箸にも棒にもひっかからない事実はあるのだ。

ここまでの高いスペックでも、50代以上の転職は大変だということだ。