人を引きつけるコピーには、どんな工夫がなされているのか。日本経済新聞記者の白鳥和生さんは「大きな数字には受け手の心を揺さぶる力がある。それを身近な値に引きつけるとより効果的だ。イナバ物置の『100人乗っても大丈夫!』というコピーが好例だ」という――。

※本稿は、白鳥和生『即! ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術 数字・ファクト・ロジックで説得力をつくる』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

私服で自宅で働く日本人男性
写真=iStock.com/kazuma seki
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表現に凝らなかった「キリンフリー」

数字を使うのは広告宣伝業界のコピーライティングの王道です。これまで時代を変えた商品がたくさん登場してきました。ヒット商品のコピー(宣伝文句)には、ニュース性をストレートに表現したものが多くあります。

その代表が、2009年にキリンビールが発売したノンアルコールビール「キリンフリー」です。キャッチコピーは「世界初、アルコール0.00%」。それまでのノンアルコールビールは、微量なアルコール分が残っていましたから、これでノンアルコールビールの進化を伝えました。

ここで理解できることは、従来の常識を覆す商品が登場した時は、表現に凝るよりも事実をそのまま伝える。つまり、そこにニュース性のある数字が含まれるなら、その魅力をストレートに伝えましょうということです。

コロナ禍に伴う「巣ごもり消費」で、パスタがスーパーマーケットの店頭でよく売れました。ヒット商品の一つが、日清フーズの「マ・マー早ゆでスパゲティFine Fast」シリーズの3分の2サイズでした。長さを従来品の3分の2にして、一人前ごとの結束タイプにすることで簡便性をより強化したものです。サイズを短くし、早ゆでを一段と訴求したことが、生活スタイルやニーズの変化の中で支持を集めました。