名刺は誰のためのものなのか

【加藤】それって「名刺が誰のためのものなのか」の話にもなるよね。自分のことを調べる手間を省くってことでもあるじゃない。いっぱい情報載せるって。

【角田】僕はフリーで特にそれを意識してるから、そういう名刺になってる。「TBS」って肩書きがついてればやってなかった。TBS制作局制作二部ってのがあればいいじゃん。プロデューサーまで付ける人がいたんだけど、 TBSの名刺でいえば僕は「制作局制作二部 角田陽一郎」までしか書かなかった。その頃は、「肩書きなんてものはその人にそんな教えなくてもいいかな」「TBSの人間なんだって分からせればいいじゃん」って思ってた。

TBSの人間でいえば、名刺に「プロデューサー」って書いてる人のほうがプロデューサー能力は低かったよ。つまり、「自分はプロデューサー能力低いんだな」ってちょっと自分でも気づいてるから、「プロデューサー」って入れたくなる。僕はメタ情報的にはそう思ってたかもしんない。

【加藤】肩書きって「職能」を示すケースと「偉さ」を示すケースがあるからね。そういえば、会社の名刺、ディレクターになった後でも、プラナーと書いてあるのを使ってたんだよね。「自分の仕事はディレクションすることじゃなくてプラニングすることだから」って。もう時効になってる話と思いますが。

人間性まで分かるのが名刺

【角田】本当に字面の意味で使ってたのね。

【加藤】若気の至りで。じゃあ、社外の名刺を作ったほうがいいのかどうかでいうと……。

【角田】僕は作ったほうがいいと思う。

【加藤】話が早い。

【角田】それに、僕的な「バラエティ的な言い方」だと、今の加藤くんのプラナーの話って一つのネタになるじゃん。「ネタがある」ってことはその人にとってはもうおいしいことだって思うから。「肩書き的にはプラナーって低いんだけど、僕はずっとディレクターじゃなくてプラナー、「プランを立てる人」だからプラナーって名乗ってたんだよね」って、加藤くんが最初に、話のとっかかりとして話すだけでさ、その人の面白さと面倒くささが分かるじゃん。

「その人の人間性まで分かるのが名刺」だとすると、これからはその人間性が分かったほうがいい。特に「二枚めの名刺」なんてのは絶対に人間性が分かんないと意味がない。そこまで考えた上でどこまで情報を載っけてどう作るか。なんならサードネームにしちゃってもいいし。

若い男性が空白の名刺をポケットから出す
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Pinkypills)

【加藤】名刺が何かを表すのは確かだな。もの書き名刺をお渡しすると、「なんで、ひらがなのほうがでっかいんですか」って七割聞かれるもんね。

【角田】なんて答えるの?

【加藤】「好きだから」、以上。