お勧めはインデックス投資

翻って日本経済はどうか。大地震に伴う津波や福島第一原発の問題では、日本政府の情報提供姿勢に落胆させられた一方、日本人の勇気に深く感銘を受けました。命を懸けて事態の収拾に当たられた人々の勇気は類稀なものだと感じています。

この50年、何度も日本を訪れてきました。繰り返し実感したのが、日本人の勤勉さです。震災への対応にもその誠実さが発揮されています。規律をもって周囲と協調しながら働く姿勢は、素晴らしい成果を生んでいると思います。

多くの日本人は、この失われた20年について、もっと大胆に行動を起こし、過去にもっと適切な手を打つべきだったと考えているかもしれません。しかし、大きな痛みを短期間で味わうか、小さな痛みをじわじわ続けながら徐々に膿を出していくのか。後者を選んだのが日本でした。

日本の社会は少数の人に大きな負担を負わせるよりも、皆で分け合おうとする風潮が強い。それが日本人の国民性の一端を示しているように思います。これが米国人であったなら、大きな企業破綻があっても、「リーマンやワコビアの破綻は過去のことだ」と割り切ることができます。

回復には時間がかかるかもしれません。けれども、日本人の勤勉さ、誠実さが底力を見せると信じています。

ここまで世界経済の見通しについて述べてきました。実は投資において、マーケットの情勢を予想することはそれほど重要ではありません。

投資の世界は優秀なプロである機関投資家たちがしのぎを削るところです。50年前、ニューヨーク証券取引所の参加者は9割の個人投資家と1割の機関投資家で成り立っていましたが、いまでは大きく逆転し、1割の個人以外は機関投資家で占められています。

しかし、プロである彼らでさえいい成績を残すことは難しい。過去20年間で実に80%のファンドマネジャーが市場平均を下回る運用成績だったというデータもあります。

では、何に投資をすればいいか。私がお勧めするのは、インデックス投資(日経平均やダウ平均など、市場の動きを表すインデックスと連動した値動きを目指す投資)です。

1人のプロに頼って高い結果を残すこともあるでしょうが、失敗する可能性のほうが高い。しかし、市場は多くのプロが切磋琢磨し投資することで、調整が働き、フェアプライスが形成されていきます。