オール電化のもう一つの柱は「エコキュート」です。これは大気中にある熱を利用してお湯を沸かすという画期的なシステムで、そのため従来の燃焼式給湯器と比べて電気代が安いのが特徴です。火を使わずにお湯を沸かしますから、大気を汚すことがなく環境にもいい。
難点はお湯をためるタンクが冷蔵庫よりも大きいことです。マンションの場合、置き場がないこともあるでしょう。すでにオール電化になっているマンションは、最初から一軒一軒にタンク置き場が用意されているので大丈夫ですが、リフォームによってオール電化にするというのはいまのところ難しいといえます。
ただしすでに述べたように、IHに替えるだけでも、劇的な生活の変化を楽しめます。
オール電化にすることをためらう人にその理由を聞くと、「ライフラインが電気だけだと、もしものとき不安だ」「停電したらどうするのか」という意見が多いようです。それらも一理ありますが、実際には阪神・淡路大震災の後、電気はガスより復旧が早かったという事実があります。ガスの場合は、引火やガス漏れの危険があるため安全性の確認にどうしても時間がかかるからです。
古い木造住宅では逆にランニングコストが高くつくことも
ガスにはガスの良さもあります。たとえば床暖房の場合、立ち上がりのパワーはガスのほうが上ですし、リビングなど大きな床面積なら、長い目で見たランニングコストもガスのほうが安いといっていい。
また、古い木造住宅は隙間風が入りやすいものです。そこをいきなりオール電化にしても、電気代は高くなってしまいます。新しい家は気密性、断熱性が高いからこそ、小さな熱源でも家全体を常時暖かくしておくことができるのです。
それでもリフォームでオール電化にしたいという場合には、断熱材を床下や天上裏、壁に入れ直したり、サッシを断熱サッシに入れ替えたりして、家全体の断熱性と気密性を上げる必要があります。
ただし、その場合は一つ注意点があります。家の断熱性、気密性を上げたなら、同時に家の換気を考えなくてはならないということです。いま、新築住宅には24時間換気が法律で義務づけられています。
リフォームして断熱性、気密性を上げた場合も、きちんと24時間換気システムを入れること。そのうえでオール電化にすれば、まるで魔法瓶のような家になりますから、光熱費のランニングコストも安く、快適な生活が楽しめると思います。
また、新築の場合にはオール電化にすることを勧めますが、リフォームの場合は、IHなど一部のみを電化機器に置き換える「部分電化」でもいいと思います。
ガスコンロからIHクッキングヒーターへのリフォームは、小さな規模でのリフォームで劇的な暮らしの変化が楽しめる、満足度の高いリフォームの代表例だといえるでしょう。