じつは洗面所が安全・快適な暮らしのカギになる
定年後を安全・快適に過ごすためには、トイレ、洗面所、浴室といった毎日使う場所の使いやすさが重要です。
まずトイレについて。重視すべきポイントは大きく3つあります。
第一に「安全性」です。そのためにはトイレの入り口を広くとること。体が不自由になったとき、人に抱えられたり、車椅子に乗ったまま出入りしたりするかもしれません。そのとき扉の前のスペースが狭いと、非常に動きにくい。できれば引き戸にしておくと扉が邪魔になりません。
そしてこれはトイレに限ったことではありませんが、入り口の段差をなくすことです。車椅子の車輪が引っかかってしまうし、つまずいて怪我のもとになります。
また、トイレにも冬の暖房対策をしっかりしておいてください。トイレで息んだときに倒れる高齢者は多いもの。暖房設備をつけるのが無理なら、コンセントを1つ余分につけておくだけでいいのです。小さなセラミックファンヒーターを置くことができます。
手すりや肘掛けなどをつけるのもいいでしょう。ただ狭いトイレに、やたら手すりをつけると、かえって体がぶつかって危ない。そのためにも、トイレのスペースは余裕ある広さにすることが大切です。
二番目に大事なのが「快適性」。最近はトイレの高機能化が進んでいますが、水を自動で流す機能や、温水洗浄便座についているお尻の乾燥機能などいらないと思うかもしれません。確かに若いうちはそのとおりです。ところが、年を取ってくると、トイレットペーパーで拭くとか、後ろを振り返って流すというなんでもない動作が辛くなってきます。そうなったとき、自動で水が流れたり、お尻を洗って乾かしたりできると便利です。また、少し狭い空間だからこそ心安らげる、落ち着ける空間づくりを考えてみてください。たとえば壁が間仕切り壁なら中は空洞になっていますから、くりぬけば奥行き10センチぐらいの棚ができるはずです。そこに新書や文庫を置いて読書スペースとしたり、趣味の小物を飾る棚にしたりできます。
それから三番目に「トイレの位置」の問題があります。年を取るとトイレが近くなりますし、夜中に起きて使うことも多くなりますから、寝室の近くにするのがいい。近くが無理なら、寝室からトイレに行くまでのルートに段差や障害物がないようにするとか、足元に非常灯をつけておくなどの工夫が大切です。
ただし、いますぐ工事することはありません。最近は、押し入れのスペースにそのまま設置できるトイレユニットもあります。もちろん排水と給水のための工事を伴いますが、必要になったときに工事をするという柔軟な考え方をしてもいいでしょう。