認知症保険は「治療保障タイプ」と「損害補償タイプ」の2つに大別できます。治療保障タイプは、認知症介護の介護費用・医療費などをまかなうための生命保険。本人が事前に加入し、認知症と診断された場合に一時金あるいは年金が受け取れるものです。子どもが親のために入るケースは珍しく、親が将来の自分の介護に備えて入っているケースが多いようです。

一方、損害補償タイプは、認知症患者の引き起こすトラブルやケガにかかる費用の実損分を補填する個人賠償責任保険や傷害保険です。たとえば徘徊による交通事故等で第三者に損害を与えた場合、賠償額は非常に高額になります。本人だけでなく家族に対して請求される可能性もあり、中には裁判になるケースも。そういった賠償責任が生じた場合、生命保険では保障されないリスクを包括的にカバーしてくれるものが損害補償タイプです。本人だけでなく、家族が契約者として加入することができます。

認知症保険には2つのタイプがある

選ぶときは補償金額にも注意

神奈川県大和市や兵庫県神戸市など認知症の住民を対象に、公費で民間の個人賠償責任保険の保険料を負担してくれる自治体も増えてきました。お住まいの地域で保険の有無を確認してみましょう。また個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険、クレジットカードなどに付帯されていることもあります。補償範囲は、契約者本人や配偶者に加えて、生計を共にする同居の親族も対象です。さらに、認知症高齢者の事故の増加を背景に補償範囲が改定された保険会社もありますので確認してみましょう。ほかにも、福利厚生の一環として、個人賠償責任保険に加入できる会社もあります。

選ぶときは補償金額にも注意してください。たとえば認知症の親が事故を起こし、万が一被害者が命を落としたり高度障害状態に陥ったりした場合、数億円など高額な賠償金を請求されることもあります。なお、生命保険と異なり、損害保険は実損填補が原則です。個人賠償責任保険を、複数の保険会社と契約していたとしても、保険金を重複して受け取ることができません。補償されるのは実際の損害額が上限となります。保険料に無駄がないかチェックすることも大切です。

保険に入るタイミングですが、基本は必要だと感じたときです。ただ、損害補償タイプの認知症保険は、認知症になってしまった親のために子ども等が加入できる商品もありますので、認知症になってから入るのでも遅くはありません。親が認知症になり、他人に迷惑をかけかねない場合、備えとして入っておくのは1つの手です。