「ポディウムジャケットは選手の着用感、使用の快適性、機能性を重視して作りました。カラーは朝日が昇る力強さをイメージしたサンライズレッド。非常に発色のよい色ですので、表彰台に立つと目立つウエアになっています。デザインテーマはジャポニズム。『折形』や『かさねの色目』など日本の伝統文化を表現に取り入れてあります」
原材料は「思い出のユニフォーム」を使った再生糸
特徴はそれだけではない。
可動性、着脱のしやすさに加えて、夏の大会を考えた通気性のよさに重きを置いている。
原材料には昔のユニフォームを再生した繊維を使った。これまでにはまったく考えられなかった試みで、全国から思い出のスポーツウエア(主にポリエステル100パーセント製品)を回収し、糸に再生。再生した糸を生地にして、ウエアの原材料にしている。
松下は「これこそやりたかったこと」と強調した。
「スポーツウエアのリサイクルは応援キャンペーンです。日本人がワンチームになって応援できるような企画なんです。
陸上の桐生祥秀選手、レスリングの吉田沙保里選手といった選手たちも昔のウエアを寄付してくれました。加えて一般の方々が協力してくれました。自分たちの想いをオリンピック選手に託して、来るべき東京大会で頑張ってもらおうというキャンペーンで、サスティナブルという考え方につながる企画でもあります。
思い出の詰まったスポーツウエアを持ってきていただいたのですが、なかには小学生もいました。できるだけポリエステル素材をお願いしたのですけれど、綿100パーセントのものもありましたし、他社製もありました。材質よりも、思い出が大事。受け入れたのは、みなさんの想いだからです」
実際に着てみて分かった細かいくふう
「今回の大会のためにいちばん苦労したのはポディウムジャケットです」
そこで、ポディウムジャケットのレプリカを試着した。
上着には通気性をよくするためのメッシュがいくつも空いている。確かに涼しい。よく見るとメッシュの分布は一様ではない。
「アシックススポーツ工学研究所で立証されたボディ・サーモ・マッピングに基づき、体温が上昇する場所を特定し、温度を下げるための効果的な構造になっている」。つまり、メッシュの位置は汗をかく量が多くなる箇所だ。クーリングスポットを研究し、メッシュをその位置に重点的に配置したのである。