キャプテンが考える「スポーツの振興に大切なふたつ」

「スポーツの振興に大切なのはふたつ。それが地域密着と子どもたちへの普及。Jリーグを立ち上げた時、読売新聞の渡邉恒雄さんから『空疎な理念』と呼ばれたけれど、結局はどのスポーツでも、プロチームは地域密着を目指すようになった。ナベツネさんからも、『川淵君の言うとおりだ』と後に仲直りしたんだ。

サッカー
写真=iStock.com/matimix
※写真はイメージです

もうひとつが子どもたちへの普及です。サッカー協会ではキッズプログラムというのをやっていて、加えてグリーンプロジェクトという校庭や公共のグラウンドに芝生を植える運動をやっています」

キッズプログラムは日本サッカーの未来のために始めたものだ。多くの子どもたちにスポーツの楽しさを知ってもらい、その中から優秀な才能を持った子どもを世界で通用する選手に育成している。

JFAアカデミーや「夢の教室」を立ち上げたワケ

JFAアカデミーがそれだ。JFAアカデミーは中学から高校の6年間で日本代表、日本サッカー全体を牽引する選手を育成するもので福島に開校した。ところが、2011年の東日本大震災で福島第一原子力発電所が事故を起こしたため、静岡県の御殿場(女子は裾野)に移転していたが、時を経て再び福島に戻る。

サッカーの指導はもちろん、英会話、リーダー教育、地域でのボランティア活動なども行っている。サッカーだけができる人間のための養成機関ではない。社会に貢献できる人間になってほしいと思って作ったものだ。

「夢先生」という名称でアスリートを派遣して授業を行う「夢の教室」というプロジェクトもある。

サッカーを教える以外にも何か子どもたちの未来に貢献できないか、子どもたちのいじめ問題や自殺問題に対して、スポーツができる働きかけがあるのではないか。川淵が思いついたのがアスリートに授業をしてもらうこと。決してサッカー選手だけではなく、さまざまなジャンルのアスリートが子どもたちに1日先生として授業をしている。

校庭や園庭の芝生化を進める「グリーンプロジェクト」

校庭や公共のグラウンドに芝生を植えようと思ったのはJリーグのチェアマン時代だったが、本格的に推進したのは日本サッカー協会のキャプテン(2002年就任)になってからだ。

当時、こんなことをしゃべっている。

「わたしは『Jリーグ百年構想』の一環で、校庭や園庭などの芝生化を推進してきましたが、日本サッカー協会としても、『キャプテンズ・ミッション』の中に『グリーンプロジェクト』を掲げ、フットボールセンターの推進と並行して、芝生の校庭や広場づくりにも取り組んでいます。芝生については、まだPRと情報収集にとどまっているのですが、今後は、このグリーンプロジェクトの中に、芝生専門の組織をつくりたいと準備を進めています」