中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になる見通し

特に、製造業が集積し、中国の国内総生産(GDP)の一割を占める南部・広東省では異例の電力不足に見舞われている。その理由は「少雨で水力発電がままならない」とか「石炭の価格上昇で火力発電所の発電が計画通りできない」などと説明されるが、そもそも内陸部の急速な工業化に伴って電力需要が増加している。さらに、脱炭素に向けた国際的な世論もあり、石炭からLNGへのシフトが進みつつあり、LNGの需要はかつてないほど高まっている。

南部の国有送電会社、中国南方電網管内の1~5月の電力消費は前年同期比23.2%も増えた。全国平均より5.5ポイント高い数値だ。このため、電力当局は5月、電力不足を理由に、産業や企業ごとに供給を調整する方針を発表するなど、中国経済の成長へのボトルネックとなっている。

信号機
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内陸部への工業化の進展で不足する電力を賄うためLNGの爆買いを進める中国。調査会社ICISエッジは、今年、中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になるとの見通しを示している。

業界では中国が世界最大のLNG輸入国になるのは2022年以降だと言われていたが、1年前倒しとなるわけだ。同社によると、20年6月から21年5月のLNG輸入量は、中国が7627万トン、日本が7632万トンとなっているが、21年の輸入量は、中国が8120万トンと、日本の7520万トンを上回る見通しだ。

LNG不足で、新電力の経営破綻は今後も続く

この「LNGの爆買い」で、日本の卸電力市場の取引価格が再び上昇基調を強めている。

日本卸電力取引所(JEPX)で毎日取引するスポット価格(24時間平均)は、5月(1~22日)の平均が1キロワット時6.87円。20年5月の月間平均値である4.18円に比べ64%も高くなった。

スポット価格はこの冬の寒波襲来と発電燃料の不足で1月に150円超まで急騰したが、2~3月は前年同期に近い水準に戻った。しかし、落ち着いたのもつかの間、LNG不足でスポット価格がまた上昇し始めた。

例年なら、暖房不需要期となる5月は余ったLNGを消費する期間だが、「今年は余剰が少ない。余ったLNGを使ってつくる安値の電気の入札がかなり減っている」(JEPX)。

電力供給が足りず電力卸価格の上昇がさらに進めば、卸市場から電力を調達する新電力の経営にも大きな打撃になる。

この冬の電力不足で新電力最大手のFパワーが3月に会社更生法を申請、経営破綻した。負債総額は464億円と21年に入り最大の倒産となった。電力の調達不足を大手電力に肩代わりしてもらう代わりに支払う「インバランス料金」の負担が新電力各社の経営の重荷になっている。「4社のうち1社は支払い猶予を受けている」(業界関係者)といい、新電力の経営破綻は今後も続くとの見通しが強い。