新電力も加えた業界は「総倒れ」の状況に

LNG火力が厳しいなか、日本の大手電力にとって最後のよりどころは原発だ。関西電力は美浜原発(福井県)が運転開始から40年を超える原発として初の再稼働にこぎつけた、「結局、日本の脱炭素のカードは原発しかないのか」との批判の声は多い。

不完全な自由化のなかで推し進めようとした脱炭素の大号令で、新電力も加えた業界は「総倒れ」の状況に直面しつつある。中国のLNG爆買いで、LNGの調達価格はあがり、それが日本の電気料金の上昇に跳ね返ってくるのも時間の問題だ。電気料金が上昇すれば、自動車や電機業界など製造業は競争力を維持するためにも生産拠点を海外に移さざるを得なくなる。その動きがさらに日本国内の電力需要を弱め、電力会社の経営を悪化するという悪循環を引き起こす。

LNGも化石燃料であるため、脱炭素の世界的な潮流の中で依存度を減らす必要があるのは事実だ。しかし、偏西風が恒常的に吹き、安定した風力発電ができる欧州とは地理的条件が違うため、すぐに再生エネルギーにシフトすることは日本にとって現実的ではない。

「地球環境保護」を全面的に掲げ、自国に有利に働くように政策誘導をする欧州に対して、「日本の国情をもっと対外的に説明すべきだ」との声は政府内にもある。しかし、原発や再エネをどういう形でつなぎながら中長期的に脱炭素に向けてエネルギー戦略を練り上げていくかという議論は、東電の福島第一原発事故以降、政府は本格的な議論を避けてきた。中国が日本に代わり、LNGの輸入大国になれば、エネルギーの安定調達が不安定になり、日本の産業を支える安価で安定的な電力供給の課題がまた一つ増えることになる。

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