男性の4人に1人、女性の7人に1人が「結婚しない」時代

そもそも、現代の日本社会ではシングルが生き方のひとつとして広がっている現実があり、50歳まで一度も結婚したことがない人の割合「生涯未婚率」は男性では約4人に1人、女性では約7人に1人です。「結婚しないこと」が珍しくない社会状況を踏まえると「皆が結婚すべき」という価値観は、そもそも古いです。また、個人の意思で決めればいいことを「すべき」と押し付けるのは差別につながります。

治部れんげ『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)
治部れんげ『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)

せっかく「結婚も大黒柱役割も引き受ける気がまったくない男性」という新しい人物像を構築したこのドラマで、もし、パート3を作ることがあるなら、その時は違う趣向にトライしてみてほしいと思います。たとえば「やっぱり結婚しない男」とした上で、桑野のような価値観を持ち、彼ほど嫌味ではない人を複数登場させる。加えて、キャリア女性が主夫と結婚するとか、同棲するけれど籍は入れないパターンがあってもいいはずです。さらに、DINKsを続ける予定だった夫婦が里親になる選択肢だって、ありそうです。

現実を見れば、私の周りにも読者の方の周りにも、人生を楽しんでいるシングルはたくさんいます。結婚して離婚した人も少なくありません。中には再婚した人もいますし、もう結婚はしたくない、という人もいます。彼・彼女たちのリアリティをよく見てフィクションに昇華していくと、実は桑野が主流化しつつある、現代日本のライフスタイルを描いた大人向けのドラマを作れる気がします。

その頃には、今、家庭を持っている人も、もしかしたらシングルに戻っているかもしれません。単身世帯の増加を見据え、ステレオタイプから自由な男女を描くドラマが増えることを期待しています。

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