危機感を強めた米国でゲームチェンジが起きている

その状況に米国の保守派は徐々に危機感を強めた。特に、オバマ政権が中国と“新しい大国関係”を目指したことの影響は大きかった。それは、トランプ前政権の誕生を支えた一因だ。トランプ政権はファーウェイなどに制裁を発動した。それは、自由資本主義の考えだけでは国家資本主義体制に対抗することは難しく、必要に応じて市場に政府が介入することは必要との考えに基づいたものだ。

さらに2021年6月に米上院は“米国イノベーション・競争法案”を可決した。法案が成立すれば、向こう5年間で総額2500億ドル(約27兆円)が量子技術開発や半導体生産の支援などに投じられる見込みだ。

安全保障体制の強化と、経済運営の効率性向上の両方に欠かせない最先端の情報通信技術などを中心に、米国政府は必要に応じて市場に介入する考えをより強めているように見える。このように米国ではレッセフェールから修正資本主義へ、経済運営のゲームチェンジが進んでいる。

NTTの「グループ企業統合」が意味するもの

米国以外の国や地域でも、市場への政府介入を重視するケースが増えている。特に、安全保障を理由に、中国企業からの情報通信機器などの調達を切り替える国が増えている。2021年9月末以降、英国政府は5G通信インフラを対象に、自国の通信事業者がファーウェイの通信機器を導入することを禁じる。事業者の多様化のための補助金も支給される予定だ。

また、英国は“ファイブアイズ(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で機密情報を共有する枠組み)”の強化も重視している。

その状況下、わが国の産業政策は大きな転換点を迎えた。その象徴が、NTTによるグループ企業の統合だ。さらに、NTTは次世代の通信技術開発を念頭にNECと資本業務提携を結んだ。NTTは富士通とも戦略的業務提携に合意し、“旧電電ファミリー”の技術力を結集することによって世界市場で戦える体力(資金力や研究開発体制)を整えようとしている。