日本の刑事司法は、英米とは仕組みがまったく違う。弁護士の高野隆さんは「日本は英米に比べて逮捕されてからの拘束期間が異様に長い。ある外国人の留学生は1年以上にわたって勾留された結果、日本人の妻がいるのにアメリカに退去強制させられてしまった」という――。

※本稿は、高野隆『人質司法』(角川新書)の一部を再編集したものです。

暗い部屋で一人でしゃがみ込む男性
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日本の刑事裁判の“恥ずべき現状”

私の弁護戦略としては、依頼人が「やってない」「無実だ」という以上、躊躇ちゅうちょすることなく徹底的に闘うようにしています。

黙秘を助言し、調書への署名拒否をアドバイスし、依頼人の自由を回復するためにあらゆる手段を講じる、というものです。こうした弁護活動はマイナスに作用するようにも見えるかもしれませんが、むしろ不起訴処分を獲得することは珍しくありません。

私の実感では、検事の機嫌を損ねて、本来起訴猶予になるはずの人が起訴されたということはありません。もちろん、否認のまま起訴されることはあります。そうしたケースは、被告人が自白していても起訴されたものだと思います。

後の章で述べるように、否認のまま起訴されると保釈が認められにくいというわが国の恥ずべき現状があります。しかし、こうした現状に戦いを挑み、依頼人の自由のために最善の努力をすること、無罪推定の権利を実質的に保障して公正な刑事裁判を実現するために全力を尽くすことこそが、刑事弁護人の大切な仕事だと私は信じています。