「どんなことでも否定せずに応援しようと思っています」
3 小言を言ったり叱ったりするのではなく応援する
岡山柏陵高校に通っていた男性Hさん(理科3類2年)は、高1の時に高校主催で出かけた「東大見学ツアー」に参加し、すっかり東大に魅了された。高3夏まで野球部漬けということもあり、それから毎日13時間の猛勉強をしたものの浪人。東大理1を狙っていたものの、直前で別の国立大学の医学部を受験し合格する。ところが、やはり「自分には東大が合っている!」と思い直し、最難関の理3を狙う宣言をする。
合格した医学部には休学届を出し、Hさんはアルバイトでホテルマンや塾講師をしながら2浪めに突入したという。弟が大学生になり、家計が厳しくなったための選択だったが、働きながらの受験生活は過酷を極め、結局、5回目のチャレンジで理3に合格した。
当時のことを母親はこう述懐する。
「小学生の頃、公文に通わせていたのですが、プリントをしないので叱ったんです。そしたら、先生からこう言われたんですよ。『お母さん、子供をやる気にさせたら勝ちなんですよ』って。難しい時はやる気をなくしちゃう。以来、そんな時は励ましていました。私は18歳までは子供は天からの授かり物だから大切に育てる。でも、成人したら神様の元へ返すものと思っていましたから、それからは息子が選んだ人生。どんなことでも否定せずに応援しようと思っています」
「ウチの子は大丈夫」“道”を外れても東大生の親は肚が据わっている
思春期以上の年齢の子供が「こうしたい」と言って来た時に「オマエならやれるさ」と即答できる親は案外少ない。親は自分の意識をアップデートできずに、過去の成功体験、あるいは世間常識に当てはめて「反対」するのだが、やる気や自尊心を削られた子供は人生の迷子になってしまうことがある。
以上、「一発逆転本」から3組の親御さんを紹介した。共通しているのは、親の胆力の練り方だ。遠回り、寄り道と思えるルートを子供が歩いても、オロオロしない、メソメソしない。どこまでも肚が据わっている。彼らはいい時も悪い時も変わらずに「わが子は何があっても絶対に大丈夫」という信念を持っているように見える。
もしかしたら、己の未来を信じ続ける子と、少しだけ遠目で子の未来を信じ切る親こそが「東大逆転合格」という大仕事をやってのける最高のコンビなのかもしれない。