食料供給量から見えた「儒教の教え」

しかし、それが、実際に日本を特別な長寿国たらしめているいちばんの理由ではない。鍵を握るのは、日本の1人当たりの食料供給量(カロリーベース)がきわめて少ないことだ。

たとえば、欧米の先進諸国のフードバランスシートを見ると、アメリカであれ、スペインであれ、フランスであれ、ドイツであれ、ほぼすべての国の1日の食料供給量は1人当たり3400~4000キロカロリーであるのに対して、日本のそれは2700キロカロリーを下回り、欧米諸国と比べて約25%少ない。

バーツラフ・シュミル著、栗木さつき・熊谷千寿訳『Numbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!』(NHK出版)
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もちろん、実際に欧米諸国の1日の平均消費カロリーが3500キロカロリーを超えるはずはない(それだけのエネルギーを必要とするのは重労働をこなす長身の男性くらいだ)が、フードロスの割合が弁解の余地さえないほど高いことを考慮しても、これほど過剰に食料を供給していれば、過食や肥満を生みだすのは必然だ。

いっぽう、実際のエネルギー摂取量を調査したところ、人口の年齢分布と、高齢者が身体を動かす機会が減っていることを考えれば当然の話だが、日本人1人当たりの1日のエネルギー摂取量は1900キロカロリーを下回っている。よって、日本が世界一の長寿国となっている最大の理由はしごく単純。

すなわち、なんでも「ほどほどの量を食べている」から。この習慣は、日本語では4つの漢字で表現されている。それが「腹八分目」。これは儒教の教えで、やはり中国からもたらされた考え方ではあるが、宴会好きで、食べ物をむだにしがちな中国の人たちとはちがい、日本人は「腹八分目」をしっかり実践しているというわけだ。

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