なお、価値貯蔵機能に着目した場合、例えばビットコインはその産出量(発行量)に上限があり希少性が高いという点で金に類似し、だからこそ希少価値があり価格も上がるという解説をよく目にする。それは暗号資産がビットコインだけならば有効な理由かもしれない。
しかし、有象無象の暗号資産が乱立している今、その希少性をどこまで評価すべきなのかは相当に注意が必要である。
もちろん、ビットコインが有象無象の暗号資産とは違って、決済機能(や価値尺度機能)にも優れているなど通貨の基本的機能を強みとして備えているならば差別化もされるだろうが、上述したように結局、そうした事実は今のところ認められない。
そもそも金の持つ価値貯蔵機能は長い人類の歴史の中で、あらゆる国・地域で認知・形成されてきたものだ。急に出てきた暗号資産が同じ位置づけになるのは難しい。
暗号資産急騰は運用難がもたらした「時代のあだ花」
最近まで暗号資産の騰勢が続いてきたのは伝統的な資産クラスの投資妙味が限界まで押しつぶされた結果、相対的な投資妙味が改善して見えたからという側面があるのだろう。
コロナ禍に対応するための形振り構わないマクロ経済政策の結果、過剰流動性が生み出され、株も債券も全くアップサイドが見込めない水準まで買われてしまった。そこで行き場を失った運用資金の置き場所が必要になり、暗号資産が選ばれたという実情もあったのではないか。
しかし、冒頭述べた通り、米国を中心にコロナ終息が視野に入る中、昨年来続いてきた金融相場が終焉に近づいている感は強い。ワクチンを無効化する変異種の登場などがない限り、遅かれ早かれ金融相場は終わるしかない。
暗号資産急騰はコロナ禍における運用難がもたらした「時代のあだ花」として散っていくことになると筆者は思っている。