千円札は、未来をつくる投票券

いくら細かい上司でも、「君は今日からランチにからあげ弁当を買ってはいけない。週に3日は焼きそばを買いなさい」なんて買うものまで強制することはないでしょう。

コンビニに立ち寄って、何気なく手にしたそのペットボトル。それが君自身の“意思”そのものです。好きなものは買うが、嫌いなものは買わない。ピュアな「好き嫌い」が表れる行動、それが買い物なのです。

買い物は一番身近で簡単な「生き方の主張」なのです。

そして、誰かの消費は誰かの売り上げになる。間接的にその会社を応援し、結果的にその会社の成長につながる。

つまり、「未来の風景を変える」という結果に少なからず影響しています。

君の街にあるかもしれないユニクロやマクドナルドも、自然と地面から生えたわけではありません。

国が「そこに建てなさい」と指示してできたわけでもありません。

僕ら消費者が選び、買い、着て、食べる行動によって、そのお店を応援してきたから、そこにあるのです。

君が手にしている千円札は、“未来をつくる投票券”です。

大げさに感じるかもしれないけれど、事実としてそう。

国や地方自治体の選挙で投票できるのは18歳からだけれど、14歳の君だって、実はとっくに投票活動をしているのです。

「こんな未来になったらいいな」と描くイメージがあったとしたら、そのイメージに近づきそうな商品やサービスを選ぶようにしてください。

1日1回の買い物でも、1年で365回。10年で3650回。君が大人になって、結婚して、子どもを育てるまでには、何万回と買い物をしているでしょう。その積み重ねのすべてが「未来への投票」です。

また、たとえお金を使わなくても、SNSで「いいね」を押すだけでも、その企業の応援になります。

君はもう立派に、社会を動かす市民になっているのだから、堂々と自分がつくりたい未来に向けて投票をしてほしいと思います。

誰でも社会を変えられる「3つの力」

ここまでに何度かお伝えしてきたように、買うことに「年齢制限」はありません。

僕たちは誰でも等しく、社会を変えられる力を3つ持っています。

1つ目は、選挙。男性も女性もそのほかの性別の人も、お金を持っている人もそうでもない人も、誰でも等しく1人1票。政治家を決める権利を持っています。

2つ目は、消費。これまでお話ししてきたように、買う行動を通じて、「好き・嫌い」の意思表示ができます。

3つ目は、投資。投資は何もギャンブルではなく、株式市場を通じて、応援したい会社を選んで成長を見守る行動です。後で僕の仕事を説明するときに詳しく話すけれど、投資も個人が社会を変えられる行動の一つです。

さてこの3つのうち、選挙は一定の年齢規定があるけれど、消費と投資は0歳からいつでも始められます(子どもも、保護者が未成年の子どもの名義で口座を開設するなどして投資に参加することはできます)。とりわけ、消費は誰でも気軽に今すぐできる行動です。

つまり、14歳の君は、すでに社会を変える行動ができるし、これまでずっとやってきた、ということ。君がこれまで自分で選んで買ってきたものすべてが君の意思表示の集合体です。部屋の中にあるもの、全部がそうです。

老若男女すべての人にとって、「何を買うか」に意思は宿るのです。

自分たちの「消費」が「社会の景色」を決めていく
イラストレーション=須山奈津希