「タバコの副流煙のせいで受動喫煙症に罹患した」
過激な反喫煙活動で知られる「日本禁煙学会」だが、この団体のトップを務める作田学理事長(医師)が、自らの行き過ぎた反喫煙活動に絡んで、刑事告発されてしまった。
この刑事告発に至るまでの経緯が、少々複雑なのだが、この点を正確に踏まえておかなければ、この一件の本質が見えてこないと思われるので、簡単に振り返っておきたいと思う。
そもそものきっかけとなったのは、ある損害賠償請求訴訟だった。その訴訟が提起されたのは、2017年のこと。
横浜市内に住む男性が、その居住する部屋の一階上に住む3人家族から訴えられてしまったのだ。その訴訟の具体的な内容としては、男性(以下、「Aさん」)の部屋から漏れているとされるタバコの副流煙が原因で、3人家族(以下、「B家」)の全員が受動喫煙症(広義の化学物質過敏症)などに罹患してしまったとして、4500万円の損害賠償金と、自宅での喫煙禁止を求めるというものだ。
この部分だけ聞くと、ヘビースモーカーのAさんが自宅ベランダなどの屋外で喫煙を繰り返したため、近隣住民から訴えられた、というような状況をイメージしてしまうことだろう。実を言うと、筆者もその一人だった。
しかし、実際の状況はまったく違っていた。
喫煙していた場所は気密性の高い音楽室だった
まず大前提として、Aさんは間違ってもヘビースモーカーにカテゴライズされる喫煙者ではなく、自宅で吸うタバコの量は、一日に数本程度だったというのだ。しかも喫煙場所は、ベランダではなく、自宅内、正確には防音装置が施された音楽室だったというのだ。Aさんの職業はミュージシャンで、喫煙していた音楽室は仕事部屋で、気密性が高い部屋であると同時に、高性能の空気清浄機も設置されていたという。
ところがB家サイドは、Aさんのそうした喫煙が、B家3人の受動喫煙症が発症する原因となった、と主張したのである。しかもB家の主張はそれだけではない。B家の室内の壁が変色したのも、鉢植えの植物が枯れたのも、すべてAさんの喫煙が原因だ、と主張してみせたのだ。