米メディアもトップ扱いで報じた
アメリカで最も伝統と権威あるゴルフ大会の一つ、マスターズ・トーナメントで優勝した松山英樹選手は、アメリカメディアでも翌朝のトップニュースの一つとして紹介された。
優勝後、グリーンジャケットを着て満面の笑みを浮かべる松山選手の写真や、ゴルフ好きで多くの名選手を出してきた日本で、国民的ヒーローとして熱狂的に迎えられていることなどが伝えられた。
こういう場合、まず日本では「日本男子初のメジャー制覇、そしてマスターズ優勝」と報道されるはずだ。ところがアメリカでは“日本人”である前に「アジア人、アジア生まれとしてマスターズ初優勝」と紹介されていることをご存知だろうか。
これは別に日本を軽んじているわけではない。というよりも、アメリカにおけるゴルフというスポーツ、特にマスターズが、これまでマイノリティーの人種にとっていかに敷居が高いものであったかということを意味している。
つまり、松山選手のマスターズ優勝がアメリカ社会に与えるインパクトは、テニスの大坂なおみ選手が初めてグランドスラムを制覇した2018年全米オープン優勝と同等か、それ以上の大きさなのだ。
野球とは比較にならないほど保守的
これまで日本人アスリートのアメリカ進出といえば、メジャーリーグが中心だった。90年代の野茂英雄やイチロー、松井秀喜、ダルビッシュ有、田中将大、そして大谷翔平など日本人選手の活躍で、ベースボール・ジャパンのイメージはすっかり定着している。また近年では八村塁選手などNBA(米プロバスケットボール)にチャレンジする日本人も増え、テニスの世界では錦織圭、大坂両選手が世界的な人気を手にしている。
しかしアメリカのゴルフは、こうしたスポーツとは全く違う次元に存在していた。
メジャーリーグがヒスパニックやアジア系、NBAもNFL(米プロフットボールリーグ)も黒人選手抜きでは考えられない今、ヨーロッパの白人スポーツのイメージが強かったテニスでも少しずつマイノリティーが活躍し始めている。
ところが、ゴルフだけはこれまで人種による階層がはっきり分けられ、1961年に全米プロゴルフ団体のPGAが非白人の出場を認めてからも、タイガー・ウッズが現れるまではほぼ100%白人のスポーツだった。アジア人が4大メジャー大会で優勝したのは、PGA選手権(全米プロゴルフ選手権)で2009年に初優勝を果たした韓国のY. E.ヤン選手だけだ。
ゴルフのメジャー大会でマイノリティーが優勝することは、他のスポーツとは比較にならないくらい画期的なことなのだ。それもマスターズとなれば、なおさらその衝撃度は大きい。