復興の前に復旧、復旧の前に救済がある。東日本大震災の被災者は「バラ色の復興構想より、被災地の生活救済を」と望んでおり、国民もそれを願っている。
そこに飛び出したのが「復興カジノ構想」だ。宮城県の「名取市東部震災復興の会」(鈴木英二会長)が、仙台空港を核としたカジノ含みの滞在型観光都市の建設計画「復興・仙台エアポートリゾート構想」をまとめ、6月26日にシンポジウムを開いた。復興カジノで中国の富裕層も引き寄せるのだという。
これと連携するように、その5日前には超党派の国会議員による「国際観光産業振興議員連盟」(通称カジノ議連、古賀一成会長)が総会を開き、「復興計画でカジノ法案提出を!」との気炎を上げた。カジノ収益を復興財源にするという名目で復興カジノを実現しようという狙いだ。総会には鳩山由紀夫前首相も出席した。
公営ギャンブルを除く賭博は、刑法で禁じられている。警察庁が遊技機試験料収入と業界団体への天下りを背景に事実上公認してきたパチンコは戦後、巨大産業に成長した。カジノ法制化は風適法所管のパチンコとの整合性が前提だ。また、法律論争以前に省益争いの調整という課題も抱えている。
そこで、「復興」の冠を付ければその突破口が開けるかもしれない……というわけだ。
ところが、その“冠”が他県のカジノ推進者に「仙台限定か?」「中央官庁との折衝が水泡に帰すのでは?」といった疑問を抱かせている。ただし、表立ってその不安が表明されることはない。「今、東北の復興は“錦の御旗”。反対すれば“朝敵”となってしまう」(カジノ関係者)からである。ちなみに、国交省は三陸地域を国際的観光地にするための必要経費を、今年度の第二次補正予算で要求する。
大型カジノを含む統合リゾートは、地域にとって外部の金で開発ができる利点がある。また、投資銀行筋にとっても利幅が大きい。しかし、その前提はあくまで短期回収だ。ガレキ処理だけでもまだあと3年はかかる開発案件に、果たして大都市同様に有利な投資を想定できるのか。そもそも、原発事故で外国人が逃げ出した日本に「富豪が押し寄せる」との想定は果たして適切なのか。「想定外」で失敗すれば、被災地はさらなる“負の遺産”を背負うことになる。