いまでは小学校の運動会で、かけっこに順位をつけないなど、教育現場でも「極力競争させない」という風潮があると聞く。でもそれは、本当に子どもたちのためになっているのだろうか。ある研究では「幼少期に競争を経験した人ほど、世の中の不公平さを知り、弱い立場の人に配慮を示す割合が増える」ということがわかったという。これからの社会を生きる子どもたちにこそ、競争の経験が必要だと伝えたい。

3.都合の悪い未来も受け入れる

「『負けるかも』なんて考えるな。勝つことだけを考えろ!」。そう教わるスポーツキッズが、日本にはとても多い。ガムシャラに勝利に向かって突き進み、「都合の悪い未来」は見ないよう、指導されている。

もっとも、子どものころであれば、こういう指導法も一定の合理性がある。不利な状況でも「俺たちはやれる!」と自分たちを奮い立たせられるチームは、勝負強いものだ。

でも、ガムシャラに突き進むことだけに慣れてしまうと、のちのちまずいことになる。明らかに勝てない状況に置かれても、その事実を「見ないように」して、打開策を考えなくなってしまうのだ。

「見ちゃうと本当にそうなるから、見ない!」。その発想はまるで、太平洋戦争の末期みたいなものだと思う。気づいたときにはすでに、取り返しがつかないことになっているかもしれない。そうなってしまう前に、「都合の悪い未来」を自分から受け入れよう。

「負けてしまいそう」と感じたときにこそ、その考えから目を背けない。悪い戦況であることを、まずは受け入れる。それだけで、その後の思考や行動は変わってくる。「本当に負けそうなのか」と冷静に分析することもできるし、「ここから巻き返すには、どうすればいいのか」と現実的な打開策を練ることもできる。「どうせ負けるなら、この試合で新しいことを試してみよう」と、発想を前向きに転換することだってできるはずだ。

撮影=関健作

4.危機感が安心を生み、安心感が危機を生む

陸上競技用のピストルの「雷管」の箱には、印象的な言葉が刻まれている。「危険であると認識しているうちは安全である」。危機感をもつことが安心・安全につながるという、わかりやすい教訓の言葉だ。

反対に「安心感が危機を生む」という教訓もありえるだろう。「自分はいま、ベストの状態だ」という安心感は、同時に「このままでもいい」という慢心につながる。すると、気がつかないうちに伸び悩んでしまう。