第二に、地域特性を考慮しない表面的な施策に終わる可能性があるという点である。

国は、かつて1980年代に「地域特性を生かした個性豊かな地域づくりを進める必要がある」として、リゾート開発や「ふるさと創生」を推進し、自治体はそれに基づいて各種事業を行った。その結果は後述するが、国の方針は、地域を活性化するどころかかえって停滞させ、深刻な財政難に陥らせた。

国は「地方創生」を進めるにあたり、それ以前の地域活性化策について、地域特性を考慮しない「全国一律」の手法や、地域に浸透しない「表面的」な施策といった問題があったことを指摘していた。リゾート開発やふるさと創生はこうした指摘が当てはまるものと考えられるが、実は「地方創生」も同じような問題をはらんでいる。

というのは大半の自治体は、地方版総合戦略の策定にあたり、外部委託を行ったためである。

委託先のほとんどが東京の業者

地方版総合戦略策定の委託先は、東京都に本社がある業者が圧倒的に多かった。戦略策定の外部委託は、結果的に地方創生の目標とは裏腹に、東京一極集中となっていた。

もちろん東京都に所在する外部業者の中には、戦略策定を発注した自治体について熟知したところもあったかもしれない。しかし、短期間で約1700の自治体が地方版総合戦略を策定したことを考えれば、そうした業者を確保するのは容易でなかったと思われる。

したがって、多くのケースでは外部業者が策定した、その地域の特性を特段考慮しない表面的な戦略に基づいて、地方創生が進められている恐れがある。地域活性化の手法は「全国一律」ではないかもしれないが、戦略を策定した業者がその自治体について熟知していなかったとすれば、地域特性を考慮していないことは確かである。

つまり、地方創生も過去の政策と同様の地域の特性を考慮しない、「表面的」な施策といった問題をはらんでいるといえる。

なお、外部委託を自治体が行った要因の一つとして、「国からの交付金があった」という回答が多く〔坂本(2018)〕、地方創生関連交付金の存在が外部委託の意思決定に影響を及ぼしていたことが窺われる。補助金による誘導があったという意味では、国が問題視していたはずの「全国一律」の手法が用いられていたと言える。

多くの自治体において、地方創生という地域活性化策の根幹にある戦略が外部業者によって策定されたということはすなわち、スタート時点からその活性化策に問題があったと言わざるを得ない。