副業を推奨する企業が増えている本当の理由
それは町工場や中小企業に限った話ではありません。かつてのように一生懸命に勉強し、いい大学に入り、就活をガンバって、いい企業に就職できたとしても、10年後、20年後、その企業が倒産するかもしれない。
コロナ禍以前から、副業を推奨する企業が増えていましたが、ざっくばらんに言えば、会社ではいつまで面倒を見られるかわからないから自力でなんとかしろ、という話でしょう。
——そんな状況にコロナ禍が拍車をかけ、ますます先が見通せなくなっています。
コロナはボトムアップ型です。ぼくらが経験したバブル崩壊や、リーマン・ショックなどの金融危機は、まず大企業が立ちゆかなくなり、末端の国民に影響が派生していった。あるいは、3・11はダメージが局所的でした。でも、コロナは、末端の弱い人から打撃を受けている。そして、被害が日本全国に広がっている。
いま、町場の飲食店への補償や支援にばかり注目が集まっていますが、ほかの業種も苦しい。大企業であっても、いつ大規模な人員整理を行ってもおかしくない。
若い世代には「群れるな」と伝えたい
にもかかわらず、ぼくと同世代の会社員は驚くほど危機感を抱いていません。何十年も会社に守られてきたから、競争力もない。もしも彼らが突然、会社から放り出されたらどうするのか。明日食べるもの、ローンや家賃、子どもの学費……。それまで当たり前だった生活がままならなくなる。自分が、いままでひとごとのように見ていた技能実習生たちと同じ立場に置かれる可能性を想像もしていないんです。
何よりも、コロナ禍は、国が国民を守ってくれないことを明らかにしました。菅総理が言ったように“自助”でなんとかするしかない。
ぼくは、いつも若い世代にこう伝えているんです。群れるな、と。
ぼくは通信社で働いていた時代、同僚だけでは絶対に酒を飲まなかった。同じ社内の人間が集まると、上司の愚痴や人事の話題にしかならないでしょう。同調して、忖度してしまうし、刺激も新たな気づきもない。そこで、取材相手か、他社の記者とばかり飲んでいました。他業種の人から知らない情報を聞けば、視野が広がるし、違う角度から社会の動きや時代の変化が見えてくるから、勉強になる。
ふだん接する情報も同じです。どのニュース番組を見て、どの新聞、雑誌を読むのか。正しい情報なのか、そうでないのか。自分で確認し、社会の動きや時代の変化を察知していくしかない。自分で、自分を守るためには、そうした毎日の積み重ねからはじめるしかないのです。