竹中平蔵氏の「ANAとJALが一緒に」発言の衝撃
「この際、ANAとJALが一緒になったらいい」――。
昨年11月の米ブルームバーグのインタビューに応じた竹中平蔵慶応大学名誉教授(パソナグループ会長)の言葉に国内の航空業界が凍りついた。竹中氏は前の安倍晋三政権下で成長戦略策定を担ってきた「未来投資会議」を廃止して菅政権下で新たに発足した「成長戦略会議」のメンバーの一人だ。
同会議の議長は菅義偉首相の側近の加藤勝信官房長官。副議長は、西村康稔経済再生担当相と梶山弘志経済産業相が務める。竹中氏のほか三井住友フィナンシャルグループの國部毅会長、SOMPOホールディングスの櫻田謙悟社長、南場智子ディー・エヌ・エー会長など8人の有識者が参加している。
竹中氏の持論は「競争を通じた経済・産業の成長」。かつて総務相時代には国の資本が入っているNTTの在り方が競争を阻害しているとしてNTTとやりあった経緯もある。同じく総務相経験者の菅首相も通信業界の寡占体質を問題視し、料金引き下げを強力に進めている。今回の竹中氏の戦略会議へのメンバー入りも「思想的に近かったこともあり、菅総理が竹中氏を推した」(自民党幹部)とされる。
公的支援を受けて再生したJALに対する「怨念」
菅首相が信頼を置く竹中氏の発言ともあって、一時前週末比4.3%安まで下落していたANAホールディングス(HD)の株価は上昇に転じ、一時2.5%高の2594円まで上昇した。JALの株価も同7.2%高の2053円をつけた。
この竹中発言に対し、特にANAが反発している。「お公家体質のJALとは企業風土が相容れない」との声が社内で上がる。ANAにとって、2010年1月に会社更生法を申請、経営破綻した際に公的支援を受けて再生したJALに対する「怨念」は根深い。
JALは会社更生法の適用を受け、企業再生支援機構からの3500億円の公的資金が注入された。欠損金の繰り越しが認められており、法人税も2019年3月期まで減免された。その結果、JALは2011年3月に会社更生手続きを終結。2012年9月には東証一部に再上場した。破綻から2年7カ月での上場復帰だった。
その後も不採算路線の縮小や減価償却費の軽減で、再上場後の2013年3月期から2019年3月期までの7年間で稼いだ純利益の合計は1兆円超と、売り上げ規模でまさるANAホールディングスの約2倍にまで達するまでに至った。