菅政権は「第三勢力」に価格引き下げの期待をかける

JALのスピード再建を進めた時の政権は民主党(現・立憲民主党)だった。当時の国交相であった前原誠司氏が地盤の京都から京セラの稲盛和夫氏を引っ張り出して再建の指揮をとらせた。その後、自民党が政権を奪取すると、運輸族のドンである二階俊博・現自民党幹事長や安倍政権を官房長官として支えた菅氏がANA支援に回った。

会社更生法で税金などを減免されているJALの勢力拡大を防ぐ「8.10ペーパー」の策定や、ANAの主要拠点である羽田空港の拡張と、それに伴って国際線の枠を優先的にANAHDにあてるなど、陰に陽に支えてきた。

しかし、竹中氏を登用して競争政策を徹底し、航空料金の引き下げなどを狙う菅政権において、ANAやJALに次ぐ「第三勢力」として期待をかけるスカイマークをANAHDが破綻に追い込むようなことがあれば、菅政権のANAHDに対する風当たりはきつくなる可能性が高い。

ドイツ、フランス、韓国など海外で進む政府の支援

さらに、成田空港から不採算の国際線の路線を間引いて羽田空港に路線を寄せるANAHDの最近のリストラも「地元の自民党議員の反発を招いている」(JAL幹部)という。

海外ではルフトハンザの株主がドイツ政府による90億ユーロ(約1兆1150億円)の出資を含む救済案を昨年6月に受け入れ、エールフランスKLMもフランスとオランダの政府から金融支援を得た。韓国では政府が間に入って韓国航空首位の大韓航空が2位のアシアナ航空との統合が進む。

日本でも政府系金融機関の融資や着陸料の引き下げなどの支援を受けているが、「自民党幹部との関係を保てなければいつ会社が傾いてもおかしくない」(ANAHD幹部)との声も漏れる。

需要消失の危機をどう乗り越えるのか。ANAHDは難しい立場に立たされている。

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