ルール上「ダンススタジアム」では一部のエースが派手なダンスをしているだけでは高得点は望めない。重要なのはステージに登る半数以上が振りをそろえる「ユニゾン」と呼ばれるパートだ。一体感が問われるユニゾンの振り付けは難しすぎたらそろわないし、簡単すぎたら評価されない。チームメイトそれぞれが身につけたスキルのレベルや、生まれ持った体格の違いを理解した上で、最適解のアウトプットが求められる。

ゆえにこの大会で上位に入る学校には、多感な女子高生たちを束ねる優れたリーダーシップが必ず存在している。以下、取材で体験した具体を記していく。

1年生の技術量はバラバラ…どうする?

大阪府立堺西高校ダンス部。この学校はバレエを基礎にした華やかなステージングで観客を沸かせる全国屈指の強豪チームだ。校舎の壁には「ダンス部全国大会○位入賞!」と活躍を知らせる垂れ幕が掲げられ、玄関にはこれまでにダンス部が獲得してきたトロフィーが飾られている。

ダンススタジオ
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2018年、最初にこの学校のダンス部を取材した際、1年生23人にインタビューしたところ「ダンス部に入るためにこの学校を受験した」と全員が口をそろえた。このチームの特徴はダンスの振り付けの難易度が極めて高いにも関わらず、初心者を積極的に受け入れていることだ。そのため新入生のダンス技術には大きなムラがある。

例えば2回転ターンをする練習で、一度も回れない部員がいる一方で、わざわざ3度回って自分のレベルを見せつける部員もいた。

公立高校の良さである門戸の広さを保ちながら、部員の技術を高水準でそろえるのは並大抵のことではない。歴代の部長・副部長たちは後輩への指導方法を大切に受け継いできた。

休校で入部が遅れても「優しくするのは違う」

昨年2020年の春、コロナ禍における最初の緊急事態宣言。日本全国の高校は3月上旬から5月下旬まで休校措置を取り、ダンス部も活動停止。堺西高校ダンス部も例年より入部が大きく遅れた1年生を、スムーズに受け入れ、育てることに頭を悩ませていた。この課題は部活動に限った話ではなく、2021年になった今も多くの企業が直面していることかと思う。

部のリーダーたちは課題解決に向けてオンライン会議を重ねていた。すでにネットを通じて、1年生に向けたメッセージを発信したり、部の活動内容について質問を受け付けたりしてきた。

そしていよいよ対面練習が再開する直前、元木菜々香部長はこう方針を示した。