一方、今、中国で流行している習い事は教師がプロ並みで、規模は大きくはないものの、組織的なビジネスとして行われているものが多い。習い事自体は、ピアノ、ヴァイオリン、書道、バレエなど日本と同じものが中心で、大きく変わらないが、他に中国ならではのものといえば、篆刻てんこく(印章を彫ること)や水墨画、国語(受験勉強以外の故事成語、漢詩、古典などを学ぶ)といったものがあり、先生はその道で、特別な教育を受けてきた人が多い。

小学校低学年でも毎晩11時まで宿題漬け

中国のSNSに流れてくる習い事の広告
中国のSNSに流れてくる習い事の広告

中国のSNSを見ていると、よく習い事の広告が流れてくるのだが、そこに出てくる先生の経歴には「アメリカのジュリアード音楽院に留学した経験がある」「ヨーロッパに音楽留学していた」「海外の美術展で入選した」といったことが書かれていて、驚かされる。先生のプロフィール写真なども出ていて、いかにもすごいキャリアを持っている、といった感じだ。

生徒募集はSNSを中心に、ほとんどネットで行われており、「個人の習い事教室」といった雰囲気とは違う。前述のヴァイオリン教室に通っている子どもは、プロを目指しているわけではなくても、1日1時間以上、練習に費やしているといっていた。有名な先生に指導してもらっているからには、軽いノリでは済まされないような雰囲気だ。

中国のネットで検索すると、1人当たり5~6個も習っているという子どももいる。習い事だけで、放課後に毎日1~2時間の練習時間を取られ、しかも、学校の宿題も日本の何倍もあるという。以前、知り合いの小学生の子どもが「まだ低学年なのに、学校の宿題をこなすだけでも毎日夜11時過ぎになる」といっていたが、学習塾と習い事の両方なら、ハードスケジュールになるのもうなずける。

中国は誘拐が多いので「送迎」は必須

中国でもう一つ、特徴的なのは、習い事の送迎だ。

北京や上海などの小学校の下校時間に校門前に行くと、各教室の名前を書いたプラカードを持った事務員やアルバイトが立っており、自分の教室に通う子どもを教室まで連れていく。親や祖父母、お手伝いさんが出迎えて、そのまま車やバスに乗せて教室に連れていくことも多い。日本でも、最近では習い事教室の担当者が送迎をすることもあるが、それは遠方から通う生徒のためなど、あくまでもサービスの一環だ。