「これは会食ではない」を誰が信じるのか
政治家が緊急事態宣言下でも会食を自粛できないのは、それが「政治家の業」だからである。
菅義偉首相が昨年暮れの12月14日夜、銀座で「高級ステーキ8人会食」が発覚して批判を浴びた。
会食相手が、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長、俳優の杉良太郎、タレントのみのもんただったことで、不要不急ではないのか、自粛するべきだったと、さらに批判が広がった。
菅首相は、二階俊博幹事長から誘われたので、行かざるを得なかったとぼやいたらしいが、後の祭りであった。
二階幹事長は「別に8人で会っただけで、会食ではない。飯を食うために集まったのではない」と抗弁したが、誰が信じるというのか。
菅首相はそれ以来、会食自粛はもちろんのこと、日課にしていたホテルでの朝食会も見送っているそうだ。そのため、「自民党内からは、会食自粛でストレスを抱えるだけでなく、『集める情報が減れば、判断に影響しかねない』(ベテラン議員)と懸念する声も出ている」と、読売新聞オンライン(1月15日)が報じた。
会見で「福岡県」を「静岡県」といい間違えたり、記者の質問に対して適切な回答ができなかったりする失態が続くのは、激務と会食自粛によるストレスがあるのではないかというのである。
当然ながら、この記事に対して、国民、中でも医療従事者たちは会食どころか、食事をとる時間や家に帰ることもできない人がいるのにという批判がSNS上で巻き起こった。
官邸で情報交換すればいいではないか
酒を飲まず、パンケーキを食べながら話をするのなら、高級ステーキ屋ですることはなかろう。
何もコロナ感染の危険のある繁華街で会食せずとも、官邸に人を呼んで情報交換すればいいではないか。
私は招かれたことがないから、官邸の中がどうなっているのかは知らない。
だが、第1回目の緊急事態宣言を出した後、安倍晋三首相(当時)は、毎晩のように官邸で仕出し弁当を取り、1人寂しく食べてから、帰宅していたと報じられた。
また、それ以前にも、安倍と親しい作家、評論家を公邸に呼んで、食事を共にしていたと報じられている。
小さいかもしれないが、食事などをする部屋があるに違いない。感染予防を徹底して、間にはアクリル板を立て、有識者たちに来てもらえばいい。
この非常時に、外で飯を食いながらでなくては情報が得られないというのでは、首相としていかがなものか。