わざわざ「不便な立地」に店を構える理由

ダイキチシステム社長の牟田稔氏は、著書『“不滅”の小さなやきとり屋 開業・成功の極意』(旭屋出版)のなかで、その立地戦略を「戦わずして勝つ」方法と称している。大吉は駅前どころか、駅の近くにすら店がない。最寄り駅から徒歩15分以上かかることも普通だ。業界では3等立地と呼ばれる場所。当然、繁華街のように集客は見込めないが、そのぶん家賃が安い。

標準店舗規模は、10坪20席程度。20人で満席の小さな店である。これなら店主1人と奥さん、あるいはアルバイトを1人使って計2人で店をまわせる。1日20人も集客すれば利益が出るという。「3等立地は不便でなんにもない」と思うのはよそ者の発想で、地元の人にとっては家の近くに思いがけず飲み屋があってラッキーということになる。住宅街ということは、人はたくさん住んでいる。そのうち一定の割合を常連客として取り込めば商売として成り立つわけだ。

焼き鳥に調味料をかける店主
写真=iStock.com/Kohei Shinohara
※写真はイメージです

この理屈はなにも大吉に限ったことではなく、町の小さな飲み屋にはみんな当てはまる。ただ、大吉が興味深いのは、それをビジネスモデルとして体系化し、チェーン展開をしたことにある。素人がいちから店を出すのは、料理の技術を習得して、経営の勉強をして、物件を探し……と、並大抵のことではない。

少ない開業資金と丁寧な「修業」

大吉では開業にあたって、店舗を借り受ける「ユーザー方式」とオーナーとして開業する「グループ方式」の2つの方法を用意。「ユーザー方式」であれば店舗の場所は本部の指定になるが、加盟金150万円と開業資金約100万円の計250万円という少ない資金で開業することができる。毎月固定の運営費用は、家賃10万~13万円、店舗使用10万~13万円(管理費1万円含む)、ロイヤリティー3万円、大吉グリラーフィー1万円だ。

「グループ方式」であれば、初期費用は加盟金150万円と開業資金が1200万~1400万円程度。家賃は大家に直接支払い、店舗使用料はかからないという仕組みである。

また、開業前の初期研修は3カ月にもおよぶ。1カ月ごとに研修店が変わり、最初の1カ月は飲食店の基本である身だしなみや衛生管理からはじまって、包丁の持ち方、肉の切り方、串の打ち方といった技術を習得する。2カ月目にはより実践的な研修となり、最後の1カ月で研修のおさらいと、開業準備を行う。ほかのフランチャイズ店の初期研修は、せいぜい2週間~1カ月だから、大吉のそれは研修というより「修業」といっていい(以上、公式HPと前掲書による)。