歯を守るなら、口呼吸より鼻呼吸

ふだん呼吸するとき、鼻からしているか口からしているか意識したことはないかもしれません。もし、口を開けている時間が長く、口呼吸をする習慣があるのなら、いますぐ鼻呼吸に切り替えましょう。口呼吸のデメリットはカゼをひきやすい、酸素の摂取量が減る、睡眠時無呼吸症候群を招きやすいなどが挙げられますが、なんといっても大きいのが「むし歯や歯周病、口臭のリスクになること」です。

口呼吸をしていると口の中が乾いてだ液の分泌量が減ってしまいます。だ液には歯や歯ぐきを守り、悪玉菌の増殖を抑える働きがあるので、だ液が減ると口の中の状態がどんどん悪化してしまいます。口呼吸をしている人は鼻呼吸に切り替えるだけで、むし歯や歯周病、口臭予防になります。鼻炎などで鼻がつまって口呼吸が習慣になっている場合は、耳鼻科で鼻づまりの治療をしましょう。習慣やくせで口呼吸になっている場合は、舌の位置を整える必要があります。

マスクが口内環境を悪化させる

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行して、働き方や生活様式がずいぶん変わりました。なかでもマスクの着用は、今後も感染症対策のために継続することでしょう。ただ、マスクには口腔環境を悪化させるデメリットもあるので要注意です。マスクをすると息がしづらくなるので口呼吸になりがちですし、口の中の温度が高くなります。

堀滋『歯のメンテナンス大全』(飛鳥新社)
堀滋『歯のメンテナンス大全』(飛鳥新社)

口呼吸を続けていると口の中が乾燥して免疫力が低下してしまいます。また、温度が高いと病原菌が増殖しやすい環境になってしまいます。二重の意味で病原菌が増殖しやすく、感染症にかかりやすくなるのです。

私もコロナの自粛期間明けに診察していて、患者さんの口の中の状態が以前より悪化していると感じました。むし歯菌や歯周病菌などが多いと口の中の悪玉菌が優勢になって、病原菌に感染するリスクが高くなります。感染症予防のためには歯のケアが必要ですし、マスクをつけている時間が長くなるほどバイオフィルムがたまりやすくむし歯や歯周病のリスクが高まるので、定期的なメンテナンスが特に重要になります。