<2020年12月3日、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、「入院患者の尿が緑色になった」という珍しい症例が報告されている……:松岡由希子>
「入院患者の尿が緑色になった」という珍しい症例が、2020年12月3日、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」で報告された。
全身麻酔・鎮静用剤の影響か?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した62歳の男性患者は、2日間にわたって呼吸困難が続き、米シカゴのワス・メモリアル病院の救急救命室(ER)に来院した。血液中の二酸化炭素濃度が高く、生命にかかわる状態であったため、患者は直ちに集中治療室(ICU)に入院。
人工呼吸器を装着し、全身麻酔・鎮静用剤「プロポフォール」が投与された。その5日後、装着式集尿袋にたまった患者の尿が緑色になった。
尿が緑色になる原因としては、閉塞性黄疸などの副作用や緑膿菌をはじめとするシュードモナス属の細菌への感染などがありうるが、この症例では、プロポフォールが原因とみられる。プロポフォールは、全身麻酔で広く用いられているが、まれに患者の尿が緑色になることがあるという。
尿の変色がどのように起こるのかは、まだ完全に解明されていない。プロポフォールは通常、肝臓で代謝されるが、特定の代謝物が肝臓ではなく腎臓から排出されたとき、尿が変色することがある。このことから、この代謝物が緑色に変色させているのではないかと考えられている。幸い、これは良性の副作用で、投薬を中止すれば回復する。
このような尿の変色が起こるのは1%未満
男性患者の尿は、プロポフォールの投与を中止すると、通常の色に戻った。男性患者は、2週間の入院期間を経て退院し、リハビリテーション施設に移ったという。
このような尿の変色が起こるのは1%未満でまれだが、インドでの2015年11月の症例でも、肥満手術を受けた62歳の女性患者が全身麻酔の導入にプロポフォールを投与され、尿が緑色になったことが報告されている。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら