欠点を消したら、長所は弱体化する

男たちは、「遠くを見る」能力で、荒野を駆け、森を開拓し、闘って家族を守り、子孫を残してきた。数学や物理学の新発見を重ね、橋を架け、ビルを建て、宇宙にも飛び立つ。

黒川伊保子『息子のトリセツ』(扶桑社新書)
黒川伊保子『息子のトリセツ』(扶桑社新書)

しかし「近くが手薄」なので、家の中では、優秀な男性脳ほど、役立たずな感じが漂う。「ぼんやりしがちな、ぱなし男」に見えてしまうわけ。

脳が子育てモードにシフトして「一生で最も気が利く状態」になっている母脳としては、気になってしょうがない。いきおい、「こうしなさい」「早くしなさい」「ほらほら」「どうしてできないの!」と急せき立てたくなってしまう。

とはいえ、「近くを注視して、先へ先へ気が利く」脳の使い方を強制すると、無邪気に「遠く」を見られなくなって、先に述べた長所「宇宙まで届く冒険心や開発力」は弱体化してしまうのである。

あちらを立てれば、こちらが立たず。これが、脳の正体=感性領域の特性だ。欠点をゼロにしようとすると、長所が弱体化する。

息子の脳に、男性脳らしさを根づかせてやりたかったら、その弱点も呑のみ込むしかない。

「息子のトリセツ」基本のキ

というわけで、まずは、息子の一生の「ぼんやり」と「ぱなし」を許そう。

息子のトリセツの、基本のキ。息子育ての法則の第一条と言ってもいい。

「息子のために多少はしつける」はあってもいいが、女性脳レベルを目指して、いきり立たないこと。しないのは、やる気がないのでも、思いやりがないからでも、人間性が低いのでもなく、できないからだと肝に銘じること。

ついでに、夫のそれも許すと、家庭生活は、かなり楽になる。

男と暮らす。男を育てる。それは、「男性脳」の長所に惚れて、欠点を許すということなのである。

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