中国の要求を受け入れた「安倍親書」
【佐藤】安倍親書には「一帯一路」構想へ日本がどう応じるか明確にされていなかったからですね。
【手嶋】その通りです。その結果、日本側は中国の要求を容れる形で、「一帯一路を支持する」と中身を書き換えてしまいました。言い訳程度に「自由で開かれたアジア太平洋に背馳しないなら」といった条件は付されていたのですが。日本政府は、この「安倍親書」を通じて、習近平政権が進める「一帯一路」構想に明確な支持と協力を表明してしまったわけです。これに反対する安倍外交の司令塔、谷内正太郎国家安全保障局長は、今井秘書官との軋轢を深めることになり、谷内辞任の伏線となったのです。この一件によって「日本は揺さぶれば操れる」という誤ったメッセージを北京に送ることになってしまったのです。
【佐藤】この「安倍親書」は、その後の安倍総理の中国訪問と、習近平国家主席の国賓としての訪日招請に繋がっていったのですから重要ですね。
【手嶋】アメリカ側では、安倍・トランプ関係が良好であったため、政権の内部から、あからさまな「親書」批判は出なかったものの、東アジア外交を担う人々の間でも、日本側のこうした動きに神経を尖らせていたことは言うまでもありません。