示唆的な「BCGワクチン」と「交差免疫」

まずは、新型コロナウイルス感染症による被害状況をデータで見てみましょう。以下の表は、2020年10月1日時点での新型コロナウイルスの流行状況のデータです。

「感染者数における死亡率」を見ると、感染症の被害が甚大だった欧米、中南米と日本・中国・韓国の数値に大きな差はないように見えます。しかし、実際のところ「感染者数」は各国の検査体制に左右されるため、あまり参考になりません。

そこで、注目すべきは「人口100万人あたりの死亡者数」です。アメリカやブラジルでは100万人あたりで500人以上が死亡。同等かそれ以上の死者が、欧州や南米地域で出ています。

一方、日本、中国、韓国のほか、この表にはない東南アジア諸国を含むアジア全体で、100万人あたりの死者数は低い数値を示しています。また、死者数だけでなく、100万人あたりの感染者数も少ない傾向にあります。

結論からお伝えしましょう。

アジア諸国の被害の少なさの要因であるファクターXは、「BCGワクチン」と「交差免疫」の存在なのではないかと考えられています。

BCGワクチン接種国と比較的少ない感染者数・死亡者数の相関性

BCGワクチンは子どもの結核予防で接種するワクチンで、日本では1949年から接種が法制化されています。二の腕に痕が残る、あの注射ですね。

ちなみに、かつては乳幼児、小学生、中学生の計3回接種が行われましたが、現在では乳児期に1回接種するだけに変わっています。

BCGワクチンによる新型コロナウイルスの感染・重症化の抑制には懐疑論もありますが、実際に接種を行っている国では感染者数・死亡者数ともに驚くほどはっきりと抑えられているのが事実です。

例えば、スペインとポルトガルは同じイベリア半島にあり、人の行き来も多く、人種や食文化は似ています。

しかし、BCG接種国であるポルトガルの感染者数・死亡者数はスペインよりもずっと低いのです。人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります。

アジア圏のほとんどの国では、BCG接種が義務づけられています。