中国経済は成長の限界を迎えつつある

感染第3波は米国経済の持ち直しペースの停滞懸念を高めている。FRB内部では仮に景気が回復したとしても、雇用環境がコロナショック発生以前の状態に戻ることは容易ではないとの警戒感が強まっている。2023年までFRBが実質的なゼロ金利政策を継続する姿勢を示しているのは、先行き不安の強さを示している。

グーグルやアマゾンといった成長期待の高い大手ITプラットフォーマーを持つ米国でさえ、動線が絞られることの経済的なインパクトは大きい。それは、世界経済にとって無視できない問題だ。なぜなら、コロナショックが発生するまでの世界経済は、米国の緩やかな景気回復に支えられてそれなりの安定を維持したからだ。

足元、主要国の中で景気の回復が先行している中国では、政府系企業のデフォルト(債務不履行)が発生している。中国経済は経済成長の限界を迎えつつある。それだけに、いつ、どの程度の効果のあるワクチンの供給が世界に広がるかは重要だ。

日本の株式市場で起きた“ワクチンラリー”

そう考えると、英国でのワクチン承認は、わが国経済にとって大きな福音といえる。米国や中国の経済と比較した場合、わが国にはEC(電子商取引)を支えるITプラットフォーマーが見当たらない。成長期待の高い企業を持たない分、わが国の景気回復には米中以上に時間がかかり、景気の回復ペースはかなり緩慢にならざるを得ない。

言い換えれば、わが国の経済成長には国内外で人々が自由に移動できる環境が欠かせない。人の移動は、わが国経済の屋台骨である自動車や機械の生産や販売、さらには国内外の観光や貿易取引の活発化を支える。ワクチン開発は、わが国経済の持ち直しペースを左右する大きな要因だ。

11月9日に米ファイザーのワクチンの有効性が発表されたことは、わが国経済の回復期待を高めた。世界的な低金利環境の継続が見込まれる中で、日本経済がワクチンという大きな追い風に支えられるとの見方が急速に高まった結果、わが国の株式市場では、“ワクチンラリー”が起きた。