SNSと同レベルに重要な「母親の後押し」

若きZ世代の男子は、総じて美意識が高い。反面、「その美意識を、購買にまでつなげるためには、越えなければならないハードルがいくつかある」と、市川さん。

その1つが「価格」であり、「最後のひと押し」。この2つに関係してくるのが、先の「母親」だといいます。

たとえば、マーケティングには「ファネル(漏斗)」という考え方があります。【図表1】のように、まず「商品一覧」を見た人を「100%」と置くと、その次の「詳細」まで進むのは全体の8割、そこから「カート」に入れるのは、多く見積もっても2割で、さらに「購入」まで進むのは1割いるかいないか……、とのニュアンスです。

【図表】購入に至る前にさまざまな理由で脱落していく

その過程で、ふるいにかけられた顧客は、漏斗(ファネル)で濾すように脱落していってしまう。

牛窪 恵『若者たちのニューノーマル~Z世代、コロナ禍を生きる』(日経プレミアシリーズ)
牛窪 恵『若者たちのニューノーマル~Z世代、コロナ禍を生きる』(日経プレミアシリーズ)

でも逆に言えば、途中で何らかの形で受け止めてくれる存在がいれば、漏斗で濾されることなく「購入」まで至ると考えられるでしょう。

その受け止め役こそが、「買ってあげるわよ」と名乗り出てくれるような、あるいは「これ、いいんじゃない?」と口コミしてくれるような「母親」ではないかと、市川さん。今後は、SNSだけでなく「母親から息子につながるような、口コミの仕掛けも考えていきたい」とのこと。

多くが、従来とはまったく違った美意識やコンプレックスを「標準装備」している、Z世代の男子。だからこそ、そこに新たなビジネスチャンスも眠っていると言えそうです。

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