結局のところ英国はEUと歩調を合わすことに

EUは2019年末、2050年までに地球温暖化ガスの排出実質ゼロを目指す野心的な構想「欧州グリーンディール」を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて悪化した景気の回復を促すための経済対策の中にも、環境対策は組み込まれている。未曽有の経済危機に瀕しても環境への配慮を忘れない点に、欧州らしさが出ている。

ポーラーベア
写真=iStock.com/SeppFriedhuber
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これに遅れること約1年、英国でも11月18日に「グリーン産業革命」という「欧州グリーンディール」と似たような構想が発表された。英国もまたヨーロッパであり、環境問題に対する有権者の関心は強い。そしてこの問題に対するスタンスの違いが、実はトランプ政権とジョンソン政権がかみ合わなかった背景の1つでもある。

米国のバイデン次期大統領は環境対策に好意的であり、英国と価値観を共有している。そして、バイデン次期大統領は親EU的でもある。トランプ大統領の下で緊張した欧米の関係は、間違いなく修復に向かう流れにある。トランプ大統領と手を携えて新たなスタンダードを作ろうとしたジョンソン首相のキバは抜かれたも同然だ。

ノーマルに考えれば、11月内のEUとの交渉は移行期間の実質的な延長で決着がつくはずだ。少なくともジョンソン首相が望んでいたかたちでFTAが結ばれることは考えられない。仮に通商交渉で合意に達せず、年内で移行期間を打ち切るとしても、結局のところ英国は価値観を共有するEUと歩調を合わさざるをえないだろう。

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