「高級品」の安易な共有はリスクを高める
トレーディングカード盗難のもう一人の被害者は、Twitterで過去に所持しているカードの写真を何度も投稿しており、レアなカードを多数所持していることが誰からも分かる状態だった。
それを「自慢している」「羨ましい」と感じた人もいたようで、被害後に心ないメッセージを送り、不快な思いをさせたユーザーもいたようだ。被害者には気の毒だが、投稿によって狙われやすくなっていた可能性がある。
Instagramに持ち物の写真を投稿している人は多いだろう。しかし、あまり高価なもの写真を投稿すると、強盗などのターゲットとされる危険性がある。
筆者はNHKの報道番組「クローズアップ現代+」で、こうした手口を解説したことがある。2019年1月21日に放送された「SNSで思わぬ被害! 犯罪集団に情報筒抜け▽すぐに対策を」では、ある男性が、Instagramにレア物のルイ・ヴィトンの衣服や高級外車の写真を投稿したことで、強盗犯にターゲットとされてしまったという事例が紹介された。
加害者は、過去の多くの書き込みと男性の背後に写り込んでいた公園の位置から、Googleアースを使って場所を特定している。さらに他のSNSで、確実に留守の期間を調べた上で空き巣に入っている。その結果、現金やブランド品など約200万円以上の金品が盗まれてしまった。
10億円の被害を受けた海外セレブも
海外でも、お騒がせセレブのキム・カーダシアンが、パリでダイヤモンドなどを含む1000万ドル(10億円)の強盗の被害にあっている。キムのInstagramのフォロワー数は執筆時点で1.9億人以上だ。
キムは、SNSで身につけたダイヤモンドの写真を公開したうえで、自身がパリにいることを明らかにしていた。この投稿によって高価なものを所持していることが筒抜けとなり、強盗被害につながったのではないかと言われているのだ。
Instagramはキラキラしたいわゆる「リア充」写真を投稿する場となっている。そのようなものを投稿すれば多くの「いいね」がもらえるが、悪意を持ったユーザーにも見られていることは忘れてはならないだろう。
なんでも共有すればいいわけではない
いま多くの人がSNSで気軽に生活を共有している。便利な面もあるが、一方でリスクもある。行きつけの店や自宅の窓からの景色、周囲の建物の外観など、不用意な投稿から、自宅などが特定される恐れがある。
投稿内に書き込まれた固有名詞で地域を絞り、投稿した写真への映り込みから場所を特定することは難しくない。複数のSNSを使うことは、自分が気づかないうちに知られたくない情報を不特定多数に公開することに等しい。
クワガタの写真を共有したことから強盗にあったという今回の事件は、「出来事を共有する」というSNS時代の根本的な振る舞いに警鐘をならしている。